日本消化器内視鏡学会雑誌
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手術不能の食道癌に対する各種内視鏡的治療に関する臨床的研究
柴田 好岡村 毅與志岡野 重幸男澤 伸一黒川 洋北守 茂奥山 修兒蘆田 知史原 久人奥村 利勝小原 剛原田 一道並木 正義武田 章三
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1989 年 31 巻 12 号 p. 3194-3206_1

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抄録

 手術不能の食道癌患者16例にレーザー治療,拡張術,人工食道挿管術などの内視鏡的治療を行った.患者の全例が男性であり,年齢は60歳から77歳まで,その平均は67.7歳である.手術不能の主な理由は高齢のため,腫瘍の転移,心肺の機能不全,全身状態の不良などによる.食道気管支瘻を合併した例は7例あった.内視鏡的治療開始後からの平均生存期間は7.1カ月であった.4例が退院可能となり,6例が中心静脈栄養から開放された.治療後のPerformance Status,食事摂取の改善が得られ,これらの治療は患者のquality of lifeを高めるうえで有意義であった. 手術不能の食道癌に対する治療は,従来放射線療法,化学療法が主体であったが,今後積極的に内視鏡的治療も考慮すべきである.内視鏡的治療の選択は,食事摂取ができることを主眼とし,狭窄の程度,狭窄距離,気管支瘻の有無などを熟慮したうえで方針を決定すべきである.

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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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