日本消化器内視鏡学会雑誌
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上部消化管出血に対する内視鏡的止血法におけるヒートプローブ法の位置づけ
清水 誠治磯 彰格大塚 弘友青木 美博多田 正大川井 啓市
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1989 年 31 巻 12 号 p. 3225-3232_1

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抄録

 過去3年6カ月の間に消化性潰瘍出血症例50例に対し,ヒートプローブ法による内視鏡的止血術を施行した.その結果,胃潰瘍症例31例中28例(90.3%)で永久止血,2例(6.5%)で一時止血が得られ,止血不能は1例(3.2%)のみであった.十二指腸潰瘍症例14例中13例(92.9%)で永久止血,1例(7.1%)で一時止血が得られ,止血不能例はなかった.吻合部潰瘍5例中全例で永久止血が得られた.全50症例中,永久止血は46例(92.0%),一時止血は3例(6.0%),止血不能は1例(2.0%)であった.潰瘍の発生部位や重症度別にみた止血率には有意差を認めず,また本法施行に際して偶発症は全くみられなかった. ヒートプローブ法は止血効果が優れているだけでなく,手技的にも容易であり諸々の要因を考慮しても,現在用いることのできる方法の中で最も優れた方法であると評価できる. また,本法施行後潰瘍の再発は1例も経験しておらず,ヒートプローブ法が潰瘍の自然史を変え得る可能性があり,今後の長期経過観察が必要であると考えられた.

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