日本消化器内視鏡学会雑誌
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8年間に渡り経過を観察し摘脾を行った原発性胆汁性肝硬変の1例
柴田 実上野 幸久住野 泰清吉田 直哉島田 長樹定本 貴明岡田 正佐藤 源一郎野中 博子
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1989 年 31 巻 12 号 p. 3274-3279_1

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抄録

 症例は55歳女性,昭和56年掻痒感を主訴に来院.生化学検査ではGOT 126KU, GPT 96KU, γ-GTP 688mu/ml, ALP 74KAU, IgM 547mg/dlと高く抗ミトコンドリア抗体(以下AMA)陰性だが原発性胆汁性肝硬変(以下PBC)を疑い同年2月腹腔鏡下肝生検を施行,組織学的にScheuerII 期のPBCと診断した.昭和59年の第2回腹腔鏡下肝生検では,ScheuerII期の所見が主体をなしていたが,線維が増生し病変は進展していた.また昭和60年より食道静脈瘤が出現し昭和62年にはRC sign陽性となった.以後硬化療法を繰り返したが食道静脈瘤は軽快せず,汎血球減少も増悪したため昭和63年3月食道静脈瘤離断術,摘脾を施行した.肝楔状生検では結節形成傾向を認め,ScheuerIII期であった. PBCは一般の肝硬変とは異なり病初期より門脈圧亢進症が現われることがあり,本例においても食道静脈瘤が出現した時期の肝の機能は比較的良く保たれ,組織学的にはScheuerII期であった.加えて本例の静脈瘤は治療抵抗性で,手術前の汎血球減少の進行がきわめて急速であった.このことを考え合わせると,PBCにおいては肝機能や肝組織の変化が軽くても,門脈圧亢進症が出現する可能性があるため,この点に留意して十分な検査と治療を行う必要がある.

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