日本消化器内視鏡学会雑誌
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経回結腸静脈的塞栓術が著効を示した胃穹窿部静脈瘤破裂の2症例について
白井 善太郎古川 浩小山 洋一徳光 秀出夫中岡 幸一坂口 正剛奥村 恂樋口 恒夫吉村 茂昭真栄城 兼清鳥谷 裕有馬 純孝志村 秀彦岡崎 正敏
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1989 年 31 巻 12 号 p. 3264-3273

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抄録

 胃穹窿部静脈瘤破裂症例に対して,緊急経回結腸静脈的塞栓術を施行し,止血し得た2症例を経験したので報告した. 自験2症例では,供血路となる左胃静脈あるいは短胃静脈径が太く,胃静脈瘤への血流量が多いことが予測された.従って内視鏡的硬化療法により通常使用量の硬化剤を注入しても止血に難渋すると思われた.また,何れの症例も胃―腎静脈シャントを合併しており,このシャントが胃静脈瘤の唯一のdrainageveinであった.このため胃静脈瘤への内視鏡的硬化療法による直接的硬化剤注入は,drainage veinの塞栓を引き起こし,流入路の静脈圧を亢進させる危険性があり,胃静脈瘤が内視鏡的硬化療法にては難治性である理由の一つと考えられた.以上の理由から自験2症例に対しては経回結腸静脈的塞栓術によって静脈瘤への供血路である左胃静脈および短胃静脈を塞栓し,静脈瘤の完全消失を認めた.経回結腸静脈的塞栓術は,安全かつ確実に静脈瘤への供血路の塞栓を行うことができる有用な治療方法の1つである.

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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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