日本消化器内視鏡学会雑誌
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出血性胃潰瘍に対する内視鏡的局注療法の臨床的検討
武田 功中野 哲熊田 卓杉山 恵一長田 敏正浦野 文博田中 裕之安藤 守秀
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1989 年 31 巻 12 号 p. 3324-3331

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抄録

 内視鏡的局注療法の有用性を評価するために,当院で最近の11年間に経験した630例の出血性胃潰瘍を対象に臨床的検討を行なった.患者を時期別に以下の3期に分けた.A期(1978.1~1980.10):内視鏡的局注療法を導入する以前,B期(1980.11~1983.12):一時止血の目的で高張Na-Epinephrine液(以下,HSE)を用いていた時期,C期(1984,1~1988.12):エタノールおよびHSEによる局注療法を施行し,露出血管がつぶれるまで連日追加局注を行なった時期とした. 各期の手術率をみると,A期の36.4%(48/132),B期の14.4%(20/139)に比し,C期では4.2%(15/359)と有意に減少した(いずれもP<0.01).また,局注療法を施行した例での手術率もB期の21.7%(20/92)に対し,C期では5.0%(13/262)と有意に低下した(P<0.01).C期における一時止血率は98.9%(259/262),永久止血率は94.3%(247/262)であった.C期に手術された13例を検討すると,露出血管の太いDieulafoy潰瘍(30.8%)か,3.1cm以上の大きい潰瘍(53.8%)でUlIVの深い潰瘍(30.8%)が多かった. 以上,出血性胃潰瘍の止血には露出血管が消失するまで連日追加局注する方法が有用であると思われたが,止血困難な症例もあり,常にその限界を考慮しつつ治療にあたることが必要である.

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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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