抄録
Double pylorusはまれな疾患であるが,胃内視鏡および胃X線検査の進歩に伴い,近年報告例が増加している.われわれは最近,胃・十二指腸潰瘍の治癒過程で僅か50日余りで形成された後天性と考えられる1例を経験した.症例は70歳の男性で心窩部痛を主訴として来院.初回内視鏡検査では胃幽門前部と十二指腸球部に深い潰瘍を認め,6週間後の内視鏡検査ではこの潰瘍に一致する部位に副幽門の形成がみられた.本例はdouble pylorusの成因を追求するうえで貴重な症例と考えられ,文献的考察を加えて検討した.