抄録
潰瘍性大腸炎に合併した大腸癌の2例を報告した. 症例1,43歳女性.7年前に発症した全大腸炎型である.注腸X線写真の遡及的検討で,発症4週後に下行結腸に10mm大の隆起性病変が認められた.7年後Borrmann2型大腸癌に進展したため,結腸全摘術を施行した.9.0×7.5cmの2型,中分化型腺癌であった.癌の周囲粘膜にdysplasiaなく潰瘍性大腸炎に偶然合併した大腸癌と考えられた. 症例2,27歳男性.10年前に発症した全大腸炎型である.2年前の再燃時,下行結腸にみられた2.5cm大の隆起性病変は,1年前にはBorrmann1型大腸癌に進展,同時にS状結腸にも隆起性病変が認められた.結腸亜全摘術を施行.切除標本で下行結腸に7.5×7.0cmの1型,一部粘液癌を伴う高分化型腺癌,S状結腸に4.5×2.5cmの早期癌,高分化型腺癌が認められた.癌巣周囲にdysplasiaを認め,潰瘍性大腸炎を母地に発生した多発大腸癌と考えられた.