日本消化器内視鏡学会雑誌
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31 巻, 5 号
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  • 木田 光広, 西元寺 克礼, 岡部 治弥
    1989 年 31 巻 5 号 p. 1141-1155
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    IIc+III,IIc+(III)型早期癌43例(m癌23例,sm癌20例),IIc+III,IIc類似進行癌22例(pm癌10例,sss癌12例)を対象として癌浸潤と潰瘍に伴う線維化につき病理組織学的に検討した.さらに,これらの検討結果に基ずくパターンによる癌浸潤と潰瘍に伴う線維化の鑑別につき超音波内視鏡を施行した臨床例で検討した.潰瘍合併早期癌群の深達度診断正診率は78.4%(29/37例)と非合併早期癌群の88.9%(64/72例)に近い成績が得られ,さらに早期類似進行癌群においても76.2%(16/21例)の正診率であり,本パターンにより癌浸潤と潰瘍に伴う線維化の鑑別がある程度可能と考えられた.しかし線維化内あるいは線維化の辺縁への微小浸潤例は誤診され,現時点でのこれらの正診は困難と考えられた.前壁70.6%(24/34例),胃角78.0%(32/41例)の病変の正診率が他と比較して不良であった.4cm以上6cm未満の病変の正診率が77.5%(31/40例)と最も不良であり病変全体の充分な走査が必要と考えられた.誤診例,および小浸潤描出正診例の検討により,現時点での超音波内視鏡の臨床上の描出能の限界は3×2mm前後と考えられた.
  • 林 延彦, 吉田 智治, 西村 滋生, 伊藤 忠彦, 平田 牧三, 宮崎 誠司, 河原 清博, 河内山 高史, 山崎 隆弘, 岡崎 幸紀, ...
    1989 年 31 巻 5 号 p. 1156-1163_1
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     健常人56名に対し,下部食道括約筋部圧(lower esophageal sphincter pressure=以下LESPと略す)に対する3種類のH2-blocker,cimetidine:200mg,ranitidine:50mg,famotidine:20mg)の作用の検討をおこなった.加えて,逆流性食道炎症例に対しranitidine,famotidineのLESPに対する作用の検討をおこなった.それぞれのH2-blockerを,静注前10分より静注後60分までinfused catheter methodで測定し,次のような結果を得た.famotidineでは,静注後5~40分後,ranitidineでは10~40分後,LESPの有意の上昇を認め,cimetidineでは一定の傾向を認めなかった.少数例ながら,逆流性食道炎症例でもfamotidine,ranitidine静注後LESPの上昇傾向を認めた.なおこれらのH2-blockerのLESPに対する作用は,おのおののH2-blockerの胃酸分泌抑制の強さに関連している可能性が考えられた.
  • ―肉芽腫の出現頻度を中心に―
    山下 和良, 樋渡 信夫, 三浦 正明, 山崎 日出雄, 森元 富造, 大原 秀一, 渋谷 大助, 浅木 茂, 豊田 隆謙
    1989 年 31 巻 5 号 p. 1164-1170_1
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    クローン病の上部消化管病変について,生検による非乾酪性肉芽腫の出現頻度を中心に,内視鏡所見と対比しながら検討した.胃では潰瘍で67%,微小病変で38%,内視鏡的正常部では19%に肉芽腫を検出できた.一方,十二指腸ではそれぞれ33%,29%,30%の検出頻度であった.胃体部,前庭部,球部,球後部に分けてみても,各群間でのその頻度に有意差はみられなかった.結局27例中17例(63%)に肉芽腫を証明できた.このように,上部消化管にも少なからず肉芽腫が存在することが明らかとなり,クローン病が上部消化管をも侵しうる疾患であることが改めて確認できた.また,上部消化管で主病変の出現が少ないのは,肉芽腫までは下部消化管と同じ病因の関与はあるものの,それ以降の病態に小腸,大腸とは異なる管腔内環境が影響している可能性が示唆された.
  • 佐藤 博之, 根井 仁一, 上島 康洋, 浦島 左千夫, 民野 均, 円山 恵子, 高瀬 修二郎, 高田 昭
    1989 年 31 巻 5 号 p. 1173-1179_1
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    H2-blockerを含む抗潰瘍剤で治療した胃潰瘍症例のうち,3カ月以上経過が遷延した遷延治癒群6例,およびいかなる治療によっても治癒しなかった未治癒群7例について,その内視鏡所見を比較検討した.遷延治癒群の初回内視鏡像では,潰瘍周囲の浮腫性隆起は全周性で,表面は平坦で柔らかな感じであり,粘膜ヒダは浮腫性隆起になだらかに移行するものが多かった.一方,未治癒群では,浮腫性隆起は全周にわたって均等ではなく,光沢は乏しく,表面凹凸不整で硬い感じがあり,粘膜ヒダは潰瘍辺縁にまで達するものが多く,一部のヒダでは,それ以前に中断するものも認められた.治癒期には,未治癒群では粘膜ヒダが中断してIIC様の外観を示し,最終的には線状潰瘍となるものが多かった.以上のごとく,真の難治性潰瘍である未治癒群では,初回内視鏡所見ですでにかなりの特徴を有しており,さらにその治癒期の像を参考にすれば,かなりの確率で難治性潰瘍の予測が可能と考えられた.
  • 定本 貴明, 住野 泰清, 柴田 実, 佐藤 源一郎
    1989 年 31 巻 5 号 p. 1180-1190_1
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     :無症候性HBウイルスキャリア31例(A群)の腹腔鏡像を無症状B型肝疾患19例(B群)と比較した.A群は男女比5.2:1,平均年齢38.5歳で,B群(18:1,33.1歳)より女性が多く年齢が高かった.A群のe抗原陽性率は35%で,B群(79%)より低かった. 腹腔鏡診断は,A群では白色肝(58%)が最多で,結節肝(10%)も存在したが,B群では斑紋肝(58%)が最多で,結節肝はなかった.A群ではB群より脈管拡大,赤色紋理が少なく,結節形成が多かった. 組織診断は,A群で慢性非活動性肝炎(42%),B群で慢性活動性肝炎(69%)が最も多かった.A群に小葉改築を伴う慢性活動性肝炎や肝硬変が7例(23%)存在し,うち6例は肝障害の既往を有し,e抗原陽性例は1例しかなかった.腹腔鏡像と組織像はよく対応したが,正診を得るために両所見の総合が重要である.血清アデノシンデアミナーゼ活性の測定は病態把握にある程度有用である.e抗体陽性にもかかわらず病態が進展した症例を提示した.
  • 木本 賀之, 土居 利光, 川口 淳, 東納 重隆, 鈴木 孝治, 岩田 雅史, 武井 一雄, 杉本 恵一, 永尾 重昭, 宮原 透, 丹羽 ...
    1989 年 31 巻 5 号 p. 1193-1203
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    著者らは今回電子内視鏡において,リアルタイムに色相・彩度強調並びにコントラスト変換が可能なリアルタイムカラーエンハンサーをオリンパス光学の協力を得て開発し,各種消化管疾患の粘膜表面の色情報についてその臨床的意義を検討した.内視鏡診断に当たっては,病変の構造・微妙な色調の差をとらえる事が重要である.従来これらは,検者の長年の経験に頼る部分が多かった所であるが,本装置の導入により,表面構造の変化の少ない病変及び信号量の少ない血管像に関しても,明瞭な色調差を得る事が可能となった.特にIIc型早期胃癌の境界,潰瘍周辺の発赤,静脈瘤の性状・範囲等の診断に有意な成績を得た.今後更に,微妙な色調の変化をより詳細に科学的に分析できる可能性も示唆された.
  • 寺林 稔, 飯石 浩康, 竜田 正晴, 奥田 茂
    1989 年 31 巻 5 号 p. 1204-1212_1
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     当院にて切除し得た胃平滑筋腫瘍36例(平滑筋腫24例,平滑筋肉腫12例)を対象とし,臨床病理学的特徴,内視鏡所見ならびに生検診断につき検討を行った.腫瘍の大きさは平滑筋腫では5.0cm未満が全体の65%を占めたのに対し,平滑筋肉腫では5.0cm以上が全体の75%を占めた.Craterの出現頻度は平滑筋腫では24%であったのに対し,平滑筋肉腫では50%であった.内視鏡的に経過を観察し得た9例の内隆起の新生または増大が認められたのは4例で,その内3例は平滑筋肉腫であった.以上より腫瘍の大きさが5.0cm以上のもの,潰瘍形成を認めるもの,内視鏡的経過観察にて隆起の新生または増大が認められたものは悪性を疑って精査する必要があると思われた.われわれが新たに開発した内視鏡直視下穿刺吸引細胞診を平滑筋肉腫5例に施行し,内4例で正診可能であり,本法は胃粘膜下腫瘍の質的診断に有用であると思われた.
  • 春間 賢, 隅井 浩治, 徳毛 健治, 森川 章彦, 木村 学, 村上 信三, 鈴木 武彦, 梶山 梧朗, 日高 徹, 末永 健二, 田原 ...
    1989 年 31 巻 5 号 p. 1213-1218_1
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     若年者に認められた胃ポリープ4例について,ポリープの組織像と背景粘膜の変化について検討した.ポリープの組織像を分類すると,腺窩上皮性過形成性ポリープ(以下腺窩上皮ポリープ)が3例で,胃底腺性過形成性ポリープ(以下胃底腺ポリープ)が1例であった.背景胃粘膜について,胃酸分泌能,色素内視鏡検査,胃生検組織により周囲粘膜の形態的検討を行った結果,腺窩上皮ポリープ2例で胃底腺粘膜を中心とする萎縮性胃炎を認めた.この様に,若年者においても腺窩上皮ポリープでは胃粘膜の萎縮をともなった例があり,これが腺窩上皮性ポリープの発生母地の1つであることが示唆された.
  • 早川 誠, 岡 勇二, 堀場 希次, 黒川 晋, 日下部 篤彦, 春田 純一, 安藤 貴文, 佐藤 嘉晃, 笹野 陽子, 杉藤 徹志, 有吉 ...
    1989 年 31 巻 5 号 p. 1221-1228_1
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     1980年から1987年までの8年間に89例の小児に内視鏡検査を施行し,小児消化性潰瘍24例を診断した.小児消化性潰瘍患児24例の内訳は,胃潰瘍4例,十二指腸潰瘍19例,および胃,十二指腸併存潰瘍1例であった. 主訴は,吐・下血が54%と一番多く,次に腹痛が25%の順に認められたが,腹痛は6歳以下の小児では稀であった.小児潰瘍の誘因としては,10歳未満6例中2例が薬剤,2例が感染症,1例が先天性疾患と考えられ,10歳以上の18例でストレスが関与していると考えられたのが9例であった. 小児において精神的なストレスが関与している場合は,そのストレスから解放する必要があると考えられた. 治療は,22例がH2プロッカーおよび制酸剤を投与し,内科的に治療した.2例は十二指腸潰瘍による狭窄のため手術が施行された. 小児内視鏡検査は,消化性潰瘍の早期診断にも積極的に活用すべきと考えられた.
  • 長南 明道, 池田 卓, 安藤 正夫, 豊原 時秋, 藤田 直孝, 李 茂基, 長野 正裕, 村上 大平, 矢野 明, 小林 剛, 木村 克 ...
    1989 年 31 巻 5 号 p. 1231-1240_1
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     1982年1月から1987年12月までの6年間に当センターで切除された噴門部陥凹型早期胃癌について内視鏡学的に検討を加え,以下の結論を得た. 1)噴門部陥凹型早期胃癌は13例14病巣,全早期胃癌の2.7%であった. 2)肉眼型は潰瘍,または潰瘍瘢痕を伴わないものが多かった.部位は小彎が,組織型は高分化型腺癌が多かった. 3)噴門部陥凹型早期胃癌の発見のためには,丹念な内視鏡的観察と同部のわずかなびらん性変化に対しても,生検を併用することが大切であると考えられた. 4)噴門部早期癌の内視鏡診断において小彎,後壁の病変では側視鏡による見おろし観察が,大彎,前壁の病変では細径前方視鏡,前方斜視鏡での高位反転観察が適していると考えられた.
  • 岡本 平次, 佐々木 哲二, 佐竹 儀治, 坪水 義夫, 藤田 力也
    1989 年 31 巻 5 号 p. 1241-1246
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     ポリペクトミー終了後の追跡大腸内視鏡検査で最大径が10mm以上または1年以内に7mm以上の腫瘍性ポリープが再発見された場合を大腸ポリープ「見逃し」例と定義した.最近6年間で腫瘍性ポリープ「見逃し」例は394例中20症例(20個)5.1%に認められた.20個の内訳は大きさは7~9mm13個,10mm以上7個であり,形態は無茎性10個,亜有茎性4個,有茎性3個,平坦型3個であった.また「見逃し」部位は右側結腸10個,横行結腸3個,下行結腸2個,S状結腸5個,直腸1個であった.特に肝彎曲部から右側結腸にかけては13個,65%もポリープが見逃されており,早期癌(m癌3例,sm癌2例)が5例も含まれていたのは注目される.腫瘍性ポリープ局所再発は6例に見られたが,4例はピースミールポリペクトミー症例であり,病理組織学的に全例絨毛成分が含まれていた.ポリープの「見逃し」は常に起こりうる可能性があり,ポリペクトミー後の患者は腫瘍性ポリープの「新生」,「再発」の問題もあり,厳重な大腸内視鏡検査でのフォローアップがなされるべきであろう.
  • 田尻 久雄, 吉野 光也, 吉田 茂昭, 吉森 正喜, 小黒 八七郎
    1989 年 31 巻 5 号 p. 1247-1251_1
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     外径0.75mmの微細径ファイバーカテーテルを親子ファイバー方式に用いて,屍体膵12例および臨床例で主膵管・胆管の観察を16例に施行した.臨床例では,16例中12例(75%)が目的の部位まで挿入され,観察可能であった.正常例の主膵管は,膵液を通して明瞭な管腔として見ることができ,毛細血管模様や膵管分枝の開口部も観察された.膵癌や慢性膵炎では,膵管内腔の不整隆起や粘膜の凹凸として観察された.しかし,本器種には,アングル機構がないため,観察視野が制限され良質な画像が得られにくいという欠点があった.そこで現在,アングル機構を装備するためのルーメン機能付外径1.7mmのファイバースコープを開発試作し,処置能,材質,耐久性について基礎的検討を行っている.
  • 小池 裕二, 柴田 好, 黒川 洋, 男澤 伸一, 佐々木 隆博, 辻 和之, 林 朋子, 小原 剛, 原田 一道, 岡村 毅與志, 並木 ...
    1989 年 31 巻 5 号 p. 1252-1258_1
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     20歳女性に発症した同時多発食道癌の1例につき報告した.患者は嚥下困難を主訴として来院.食道X線検査でIu,Im領域に長さ約8cmにおよぶらせん状狭窄の所見を認め,内視鏡検査では門歯より25cmの部を主体にほぼ全周性の狭窄がみられた.生検組織所見では中分化型扁平上皮癌であった.術前検査で大動脈,気管分岐部への浸潤も疑われたが,術前照射後切除可能と判断し,胸部食道全摘術を施行した.手術所見はA3,N3,M0,P0,StageIVであった.切除標本では胸部上中部食道に全周性の最大長径5cmの潰瘍性病変が存在し,そのほかに食道下部において全周性に約3cm幅の表層性病変がみられた.病理組織学的に主病変は瘢痕組織内に一部腫瘍細胞を残す所見を示し,食道下部病変は全層にわたる低分化型扁平上皮癌であった.若年発症の食道癌は少なく,ことに10歳代,20歳代の食道癌はまれであり,その本邦報告例は自験例も含め16例にすぎない.特に先天性奇形などのなんらかの身体的要因を伴わない若年者食道癌例としては,本症例は本邦における最若年者と思われる.
  • 北川 隆, 岡野 重幸, 相馬 光宏, 武藤 英二, 武田 章三, 神田 誠, 柴田 好, 岡村 毅與志, 並木 正義
    1989 年 31 巻 5 号 p. 1261-1268_1
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は86歳の女性,約2カ月前からの嚥下困難を主訴として入院.食道エックス線検査でImからEi領域にかけて境界明瞭な腫瘤性病変を,また内視鏡検査で食道内腔のほとんどを占める表面凹凸不整の,一部びらんを伴ったポリープ状隆起を認めた.食道肉腫の診断で食道亜全摘,頸部食道・胃管吻合術を施行した.摘出標本で病変は7.0×4.0×2.2cmの大きさで,表面が大小の凹凸を示す,くびれのある腫瘤であった.病理組織学的に腫瘤の大部分は束状をなし交錯して配列する紡錘形細胞からなる肉腫組織で占められ,深部および水平面に沿って不規則な層状配列を示す中分化型扁平上皮癌(深達度mp)の増生がみられた.電顕的に肉腫様組織の細胞は大きな核と不規則に増生した粗面小胞体を有し,細胞間は胞体で接合しているが,稀にdesmosome様構造も認められた.しかしtonofilamentはみられず,積極的に上皮由来を示す所見は得られなかった.以上の根拠から食道癌肉腫と診断した.
  • 木村 典夫, 武藤 信美, 近藤 伸宏, 原澤 茂, 三輪 剛, 幕内 博康, 三富 利夫
    1989 年 31 巻 5 号 p. 1269-1275
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     今回,早期食道癌手術1年6カ月後,再建胃管に微小胃癌を認めた1例を経験した.症例は78歳男性.昭和61年3月健診にて胸部中部食道左壁に異常を指摘され内視鏡検査にて表在陥凹型食道癌と診断,同年5月右開胸による胸部食道全摘,胸壁前頸部食道胃管吻合術施行.組織学的には,病変は11×10mmで扁平上皮癌,深達度mmでリンパ節転移はなく早期食道癌であった.術後経過良好で外来にて経過観察していたが昭和62年10月内視鏡にて挙上胃管の幽門前部に3~5mm大の微小胃癌を指摘,昭和63年2月胃管部分切除術を施行した.組織学的に病変は2×2mmで高分化型腺癌,深達度mの微小胃癌であった.食道と他臓器との重複癌の発生頻度は第23回食道疾患研究会によれば3.6%と報告されており,本邦では特に胃との重複癌がもっとも多い.一方食道・胃がそれぞれ早期癌であった例は17例にすぎず,本症例ような再建胃管に生じた異時性早期食道胃癌の報告は自験を含め2例が報告されているのみである.
  • 平松 通徳, 杉本 博, 三宅 健夫, 内野 治人
    1989 年 31 巻 5 号 p. 1276-1280_1
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は,46歳の女性.糖尿病と急性腎盂腎炎で入院治療中,スクリーニング検査としての胃透視で偶然見出され,胃内視鏡下の生検により術前に確定診断された胃カルチノイドの1例である. 術前の検索で尿中5-HIAA,血中セロトニン,ヒスタミン等はすべて正常であり,カルチノイド症候群は認められなかった.近位胃切除による治癒切除の直後より,糖尿病が自然軽快し,5年経過後の現在も腫瘍および糖尿病の再発が認められず,カルチノイドが糖代謝異常に深く関与していたと考えられるきわめて興味深い症例である.消化管カルチノイドの切除後に糖代謝異常が改善した例は,過去に直腸で1例報告があるのみで,胃では本症例が最初であり,きわめて貴重な症例であると思われた.
  • 岡山 安孝, 後藤 和夫, 野口 良樹, 白木 茂博, 松葉 周三, 神谷 泰隆, 大原 弘隆, 中山 善秀, 伊藤 信孝, 滝本 一, 林 ...
    1989 年 31 巻 5 号 p. 1281-1289
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は67歳男性.精上皮腫摘除術後に心窩部を含む後腹膜リンパ節領域に対して4,350radの60Co放射線照射を行った.その後約6カ月後に心窩部不快感を主訴として当科を受診した.胃X線検査により,胃前庭部後壁に皺襞集中を伴う不整形潰瘍を認めた.胃内視鏡検査では,白苔を有する深い潰瘍で,その肛側にも不整形小潰瘍を認めた.前庭部の粘膜は浮腫状で多発性の出血,びらんを認めた.生検は陰性であった.放射線胃潰瘍と診断し,内科的治療にて経過を観察したが,前庭部の狭窄は強度となり,潰瘍は治癒傾向を認めず,さらに新たな出血性潰瘍が出現した.この時点で手術を施行した.切除胃の組織学的所見では粘膜の萎縮,粘膜下織の肥厚と線維化,血管壁の肥厚,内腔の狭小化,血栓形成を認め,従来より報告されている放射線障害に特徴的な所見に一致した.また,胃切除5カ月後にはS状結腸に放射線性大腸炎の合併を認めたが,内科的に治療可能であった.
  • 松葉 周三, 後藤 和夫, 野口 良樹, 白木 茂博, 神谷 泰隆, 大原 弘隆, 中山 善秀, 神谷 武, 岡山 安孝, 武内 俊彦
    1989 年 31 巻 5 号 p. 1290-1296
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     ERCPが原因で発症したと思われる細菌性心内膜炎の1例を経験した.患者は47歳,男性.ERCPおよび諸検査にてアルコール性慢性膵炎(I群)と診断した.ERCP施行後9日目より39℃台の発熱をきたし,心エコーにて僧帽弁後尖に疣贅の付着を認め,血液培養にてStreptococcus faecalisを検出したため,細菌性心内膜炎と診断した.Ampicillinの投与によって治癒を認めた.これまでERCPによって細菌が消化管粘膜または膵管,胆道から血中へ侵入することにより発症すると考えられている一過性の菌血症または敗血症の報告が散見される.本症例は僧帽弁閉鎖不全を合併していたため,ERCPによって発症した菌血症が細菌性心内膜炎に至ったものと思われる.また,著者らはERCP施行直後,28例に血液培養を施行したが全例細菌を認めなかった.諸家らの報告からこの種の菌血症は一過性であることが多く,また弱毒菌であるため臨床上問題となることは少ない.しかし,先天性心疾患,後天性弁膜症,人工弁患者,免疫不全患者などでは細菌性心内膜炎や敗血症が発症しやすく致命的となる可能性が高い.その対策としては検査施行前後にAmpicillinを中心とした抗生剤の予防的投与の必要性が示唆された.
  • 印牧 直人, 岸 克彦, 諸岡 隆, Chris BRÜNGER, 加藤 肇, 服部 和彦
    1989 年 31 巻 5 号 p. 1297-1303_1
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     Nd:YAGレーザーの照射条件を設定することにより,細径でシングルチャンネルである胆道鏡下での局所温熱療法(レーザーサーミア)を試みた.症例は78歳女性で食欲不振と黄疸を主訴に来院.PTCDを行い,下部胆管癌による完全閉塞と診断した.心不全により手術不能のため,内瘻化を目的としてPTCS下にレーザーサーミアを施行した.レーザーサーミアは1.8mm導光ファイバーとinterstitial probeを使用して,照射出力2.0W,最初の90秒は連続照射,その後パルス照射の条件で,15分間,1,085ジュールを照射した.レーザー照射直後には,特に合併症もなくドレナージチューブの十二指腸への留置が可能であった.さらに照射4日後には,腫瘍の一部が脱落を示した.温度センサーを用いない照射条件設定によるレーザーサーミアは,PTCS下での適応が可能であり,胆道癌に対して有効な治療法になり得るものと考えた.
  • 石岡 達司, 難波 次郎, 三浦 寛人, 篠井 格, 瀬崎 達雄, 長田 高寿
    1989 年 31 巻 5 号 p. 1304-1308_1
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は73歳,男.呼吸困難,腹満感を主訴として入院.入院時,両側下肺野を中心に誤嚥性肺炎を認めた.腹部は膨隆し臍周囲に軽い圧痛を認め腸雑音は低下していた.腹部単純X線撮影にてガスにより拡張した小腸と大腸を認めた.入院時検査では白血球数16,000/mm3,CRP5+,ESR60mm/1hと強度の炎症反応を認めた.抗生剤にて治療を行い肺炎は治癒したがWBC6,100/mm3,ESR54/1h,CRP2+と軽度の炎症反応は持続していた.同時期の大腸内視鏡検査では盲腸部に全体的にやや退色し表面が平滑であるダルマ状の腫瘤を認めた.生検を行ったところ白色膿汁が流出し,4日後の大腸内視鏡の再検では腫瘤が存在した部位に虫垂の開口部が認められ,腫瘤は消失していた.生検標本では腸粘膜に好中球の著しい浸潤を認めたため,盲腸腫瘤を形成した虫垂膿瘍と診断した.排膿後,炎症反応は速やかに消退し退院となった.本例は盲腸腫瘤の鑑別や治療において貴重な症例と考えられた.
  • 坂戸 政彦, 嶋倉 勝秀, 山口 孝太郎, 上條 登, 滋野 俊, 川上 裕隆, 斉藤 博, 古田 精市, 高橋 千治, 飯田 太, 太田 ...
    1989 年 31 巻 5 号 p. 1311-1318_1
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     白血病の治療中に大量消化管出血を来たし,興味ある内視鏡像を呈した非特異性小腸潰瘍の2例を経験した.症例1:48歳,男性.急性白血病のためBHAC-DVMP療法を施行.その寛解期に大量の下血が出現.術中回腸内視鏡検査で,回盲弁からその口側約40cmの回腸に計4個の中等大の潰瘍とアフタ様の小潰瘍の散在を認め,同部からの出血を確認し回腸盲腸切除術を施行.切除標本では回腸に卵円形,UlIIIの潰瘍を4個,アフタ様,UlIIの小潰瘍を多数認め,白血病細胞の浸潤はなく非特異性潰瘍の所見のみであった.症例2:49歳,男性.慢性骨髄性白血病の急性転化のためBHAC-AVP療法を施行中に大量の下血を生じた.下部消化管内視鏡検査で回腸終末部にやや大きめの潰瘍4個とアフタ様の小潰瘍の散在を認めた.この2例の小腸潰瘍の原因は不明であるが,その内視鏡像の類似性より両者に共通した原因が考えられる.
  • 松井 成生, 吉川 宣輝
    1989 年 31 巻 5 号 p. 1319-1324_1
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     直腸の粘膜脱症候群(mucosal prolapse syndrome)の2例について報告する. 症例1は40歳女性.肉眼的に完全直腸脱を認め,注腸造影で径約1cmの隆起性病変が数個あり,内視鏡的に直腸の粘膜下腫瘍と診断された.組織学的には深在嚢胞性直腸炎(localized colitis cystica profunda)であった. 症例2は34歳男性.排便困難を主訴とし,幼少時より排便時強く"いきむ"習慣を有する,いわゆるstrainerであった.注腸造影にて直腸に癌を思わせる陰影欠損像を認め,内視鏡的には,上皮性変化の少ない腫大した粘膜に潰瘍を伴っていた.組織学的検索により孤立性直腸潰瘍(solitary ulcer of the rectum)と診断された. いずれの症例も粘膜固有層に線維筋症(fibromuscular obliteration)の所見を有していた.症例1は顕在性の直腸脱を,症例2は強くいきむことによる潜在性の粘膜脱を有し,粘膜脱症候群(mucosal prolapse syndrome)として同一のentityに入る疾患と考えられた. 本疾患の診断には,粘膜脱の存在を確認することが重要である.潜在性の粘膜脱の場合には,詳しい問診が必要であり,排便指導が有効である.一方顕在性の直腸脱が存在する場合には,これを外科的に治療することが大切であると思われる.
  • 児玉 光, 五十嵐 潔, 鶴居 信昭, 渡部 博之, 千葉 満郎, 正宗 研, 成沢 富雄, 上坂 佳敬, 向島 偕, 久保 信之
    1989 年 31 巻 5 号 p. 1325-1334_1
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     潰瘍性大腸炎に合併した大腸癌の2例を報告した. 症例1,43歳女性.7年前に発症した全大腸炎型である.注腸X線写真の遡及的検討で,発症4週後に下行結腸に10mm大の隆起性病変が認められた.7年後Borrmann2型大腸癌に進展したため,結腸全摘術を施行した.9.0×7.5cmの2型,中分化型腺癌であった.癌の周囲粘膜にdysplasiaなく潰瘍性大腸炎に偶然合併した大腸癌と考えられた. 症例2,27歳男性.10年前に発症した全大腸炎型である.2年前の再燃時,下行結腸にみられた2.5cm大の隆起性病変は,1年前にはBorrmann1型大腸癌に進展,同時にS状結腸にも隆起性病変が認められた.結腸亜全摘術を施行.切除標本で下行結腸に7.5×7.0cmの1型,一部粘液癌を伴う高分化型腺癌,S状結腸に4.5×2.5cmの早期癌,高分化型腺癌が認められた.癌巣周囲にdysplasiaを認め,潰瘍性大腸炎を母地に発生した多発大腸癌と考えられた.
  • 川井 啓市
    1989 年 31 巻 5 号 p. 1337
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 福井 謙一
    1989 年 31 巻 5 号 p. 1338-1345
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 並木 正義
    1989 年 31 巻 5 号 p. 1346-1348
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    Although the advancement and spread of gastrointestinal endoscopy has been recently remarkable, we should bear in mind the fact that medical accidents and subsequent medical lawsuits have been increasing in number. There are many reasons for the recent increases in medical troubles and lawsuits, but the disappearance or lack of a good relationship between the doctor and the patient is one of the most crucial problems. In the background, there are also the following important factors : the promoted awareness of rights in ordinary people, that is, the development of sharp sense of human rights and claims on the side of patients, the diminishing of ethics on the side of doctors, and biased dealings with medical accidents by the mass media. The examination of many judicial precedents revealed that the most significant points of debate are : (1) whether the doctor's liability to be careful enough was properly performed ; and (2) whether the liability to inform in advance was adequately carried out. As far as the patient trusts the doctor and, in turn, the doctor respects the patient's character and right of decisionmaking, with the principle of informed consent being strictly maintained, medical lawsuits would never occur. I describe the problems related to the patient's right of decision-making, the doctor's liability to inform and its practice, and fundamental ways to cope with medical suits, by demonstrating informative judicial precedents.
  • 土橋 康成
    1989 年 31 巻 5 号 p. 1349-1351
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    According to their density and distributions the ascending mucosal capillaries (AMC) of stomach can be divided into three distinct zones horizontal to mucosal surface. The first is the zone I with high vascularity where AMC forms dense anastomosing networks encircling the glandular portion of gastric glands. The second is the zone II with reducing vascularity where AMC is reduced in number and in each caliber forming a constriction at the level of the generative cell zone (G-zone). The thied is the zone III with increasing vascularity where AMC is increased in number and in each caliber toward the mucosal surface at the level of foveolae. In chronic gastritis the vascularity at the level of the glandular portion of gastric glands is progressively reduced resulting in a progressive reduction in size of the zone I. Whereas the zone II and III are progressively and somewhat irregularly expanded. These changes are found to be coupled with a progressive loss of proper gastric glandular epithelial cells, appearence of pseudopyloric mucous cells, foveolar hyperplasia and Medicine. appearence of metaplastic intestinal glands. Since intestinalized glands are found not to connect with the gastric glands preserving parietal cells, the total loss of parietal cells in a gland that may due to a loss of stromal support in the form of progressive vanishment of the zone I can be a prerequisite for the development of intestinal metaplasia. Since pseudopyloric glands are found to have less vascular stromal support than proper pyloric glands the defensive mucous secretory capacity is thought to be reduced in the former. This may explain preferencial locus specificity of chronic gastric ulcers in the intermediate mucosa along the lesser curvature. Since irregular expansions of the zone II and III are coupled with irregular expansion of G-zone these changes may constitute predispositions to the development of gastric cacinomas through an increased accessibility of carcinogens to carcinogen target cells, an increased carcinogen target cell mass, altered controls of cellular proliferation and a decreased capacity of atrophic glands to detoxify carcinogens. Further studies on chronic gastritis may make assessment of risks of carcinogenesis possible using biopsied materials. This suggests an emergence of new dimension of gastro-intestinal endoscopy that embraces preventive medical approaches. (These works were in part supported by grant-in aids from Ministry of Education, Science and Culture, Japan.)
  • 中島 正継
    1989 年 31 巻 5 号 p. 1352-1354
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    Endoscopic removal of biliary stones was successful in 820 of 862 patients (95.1%) ; 36 of 38 through the postoperative T-tube track, 744 of 780 through the peroral transpapillary route and 40 of 44 by the percutaneous transhepatic approaches. Most cases were performed by the duodenoscopic instrumentation after endoscopic sphincterotomy (EST). The new techniques such as electrohydraulic lithotripsy, laser beam lithotripsy and mechanical basket lithtripsy were very effective for this purpose. The complications were recognized in 45 of 780 patients (5.8%), 3 out of wich were fatal cases (0.4%). Endoscopic therapy is now the major method for the management of cholelithiasis. In the near future, bile duct stones will be completely treated by the combined use of the various nonsurgical methods.
  • 川井 啓市
    1989 年 31 巻 5 号 p. 1355-1361
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 日本消化器内視鏡学会
    1989 年 31 巻 5 号 p. 1362-1379
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 日本消化器内視鏡学会
    1989 年 31 巻 5 号 p. 1380-1388
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 日本消化器内視鏡学会
    1989 年 31 巻 5 号 p. 1389-1399
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 日本消化器内視鏡学会
    1989 年 31 巻 5 号 p. 1400-1419
    発行日: 1989/05/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
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