日本消化器内視鏡学会雑誌
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肝炎の赤色紋理発現と血管床の変化との関連について
堀池 典生宮岡 弘明恩地 森一檀上 賢次太田 康幸
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1989 年 31 巻 8 号 p. 2121-2125_1

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抄録

 肝炎の赤色紋理の発生機構を明らかにする目的で,第VIII因子関連抗原をマーカーとして,血管床を酵素抗体法で観察し,血管増生の面より検討した.赤色紋理は,B型慢性肝炎で128例中27例(21%),非A非B型慢性肝炎で120例中31例(18%),自己免疫性肝炎で12例中8例(67%)が陽性であり,自己免疫性肝炎で有意に高率であった(p<0.05).赤色紋理の狙撃生検組織では,肝細胞壊死,細胞浸潤および血管床,特に直径50μm未満の血管床の増加を認めた.ウイルス性慢性肝炎において,赤色紋理を認める症例の門脈域血管床は,認めない症例に比べ,直径50μm未満のものが有意に増加していた(p<0.05).自己免疫性肝炎3例において,ステロイド治療前後で赤色紋理を観察し,2例で改善を認めた。赤色紋理の消長と門脈域の血管床の増減は一致した.以上の成績より,赤色紋理の消長には血管床が関与していることが証明された.

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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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