抄録
胃結核はまれな疾患であり,本邦において内視鏡下生検で診断した報告は16例に過ぎない.著者らは内視鏡下生検組織の培養で結核菌を証明し,潰瘍型の孤立性胃結核と診断した症例を経験した. 患者は脊椎管狭窄症で当院整形外科に入院していた74歳の男性で,嘔気,嘔吐,心窩部痛が生じたため内視鏡検査を施行した.胃体下部から胃角部前後壁に不整形の潰瘍が多発しており,内視鏡下生検組織像では類上皮肉芽腫,乾酪壊死および結核菌は証明できなかったが,採取した生検組織の培養により結核菌を同定し胃結核と診断した.抗結核剤投与により,内視鏡的に6週間後,潰瘍の改善を認めた. 胃結核で内視鏡検査にて直接結核菌を証明した報告は,今までに本邦で1例のみであり,また,検索しえた範囲では内視鏡下生検組織の培養を行い,胃結核と診断しえた報告は認めず,若干の文献的考察を加え報告する.