1990 年 32 巻 12 号 p. 2938-2945
食道腫瘍7例に対してHSE局注を併用した内視鏡的粘膜切除(ERHSE)を施行した.本法の特徴は出血性胃潰瘍に対する内視鏡的止血法のために独自に開発し,さらに早期胃癌の内視鏡的切除に応用してきたHSE液を使用することにより,腫瘍を安全にしかも確実に切除できる点である.その方法は,(1)切除予定線を高周波メスにてマーキングする.(2)HSE液を粘膜下層に局注し病巣部を膨隆させる.(3)切除予定線を高周波メスにて切開する.(4)把持鉗子にて切除予定組織を十分挙上する.(5)スネアをかけて絞扼し通電させて切離する.(6)切除組織の回収及び確認をするというものである.全例完全に切除することができ,病理組織学的検索をなし得た.その内訳は平滑筋腫4例,顆粒細胞腫2例,扁平上皮乳頭腫1例である.また本法による出血や穿孔などの合併症はなく,経過も良好であった.以上より本法は食道腫瘍の治療に優れており,従来施行困難であった平坦あるいは陥凹性病変,とりわけep癌や異形成病変などにも適応でき,内視鏡的治療および診断に広く応用できる.