抄録
オリンパス社製ラジアル走査式超音波内視鏡を用いて,潰瘍性大腸炎13例に30回の内視鏡的超音波断層法(EUS)を施行し,炎症による大腸・直腸壁構造の変化を検討した.潰瘍性大腸炎のEUS超音波像は3型に分類でき,1型は壁肥厚なく,層構造や層境界に異常を認めないもの,2型は層境界は明瞭だが,第1層が低エコー化して第2層が肥厚するもの,3型は第1層から第3層にかけて層境界が不明瞭となり,低エコー化しているものとした.なお,1型から2型,3型へと変化するにつれて,壁が肥厚する傾向にあった.これらのEUS像をMatts分類による内視鏡的重症度およびTrueove and Wittsの基準による臨床的重症度と比較検討すると,EUSによる超音波所見は内視鏡的重症度や臨床的重症度によく相関した.特に,EUS施行時に内視鏡で活動性炎症の水平方向の拡がりを観察し,超音波像で垂直方向への拡がりを判定すれば,炎症を容積としてとらえることが可能となり,その積算値は臨床的重症度とよく相関した.なお,今回の検討例において周辺のリンパ節が13例中5例に描出されたが,経過を追えた3例では治療による改善とともに消失した.以上のごとく,EUSによって潰瘍性大腸炎の炎症の程度を3次元的に把握できることが明かになったが,このことは潰瘍性大腸炎の病態学的検討に重要な意義をもつものであり,今後の大いなる発展が期待される.