日本消化器内視鏡学会雑誌
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治癒経過中に潰瘍底の隆起を来した胃潰瘍例の検討
原 猛西岡 新吾奥 篤森本 善文横矢 行弘江川 正一中田 秀則坂辻 喜久一辻本 守幸中山 恒夫矢高 勲高辻 幹雄東 克彦辻 佳宏塩路 信人
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1990 年 32 巻 3 号 p. 538-544_1

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抄録
 われわれは1983年から1986年の4年間に治癒経過中潰瘍底が隆起を呈するいわゆる隆起型胃潰瘍の8例を経験した.頻度は治癒期を確認した胃潰瘍の1.8%.年齢は49歳から75歳,平均64.0歳.男女比7:1.主訴は吐血または下血が7例.部位は胃角小彎が5例と多く,潰瘍の活動期の大きさは2cm以上が5例を占めた.投与薬剤はcimetidine 7例,famotidine 1例.隆起確認時期は活動期から7週後3例,6週後2例,4週,25週各1例.隆起部分の生検組織像は肉芽組織の所見であり,隆起の形態は光沢のある白色隆起,辺縁に輪状の白苔を有する発赤した半球状隆起,頂上部に小さな白苔を伴う赤色隆起の3種類に分類された.隆起は潰瘍底の肉芽組織の過剰増生によるものと考えられ,隆起型潰瘍の活動期から瘢痕期に至る期間はコントロール群の潰瘍に比し長い事から,隆起の形成は潰瘍の治癒過程を遷延させる要因の1つと考えられた.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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