日本消化器内視鏡学会雑誌
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十二指腸潰瘍治療中にみられた食道mucosal bridgeの1例
三浦 義邦佐藤 雄三
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1990 年 32 巻 4 号 p. 872-878_1

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抄録

症例は40歳の男性で,昭和62年より,十二指腸潰瘍として治療中であったが,平成元年1月初旬に,頻回の嘔吐をきたしたので内視鏡検査を施行したところ,H1stageの十二指腸潰瘍と共に,門歯列より約35cmの食道の前後方向に,色調に変化のない細い索状物を認めた.両端は固定されているようだったが,鉗子操作により一端は壁より剥離されmucosal tag様を呈した.食道X線造影では軽度の第2斜位において,中部食道に約5cmの紐状隆起として認められた.同時に施行した生検標本では,重層扁平上皮で構成された食道上皮で,悪性像や炎症所見は認められなかった.本症の成因に関しては,先天的なものと,健診時偶然発見されたものを加えた例が多く,次いで逆流性食道炎の治癒過程や,食道静脈瘤の内視鏡的硬化療法後に発生したものが多い.われわれの症例の場合は原因不明であるが,6カ月後のX線および内視鏡検査により,なお存続している.

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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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