抄録
症例は,63歳男性,Immunoblastic Lymphadenopathy(IBL)1ike T-cell Lymphomaの経過中に,上腹部痛,食欲不振のため上部消化管内視鏡検査が施行された.十二指腸球部に中心が白色調の隆起性病変を認めた.同部の生検では粘膜上皮細胞内に巨細胞封入体を認め,サイトメガロウィルス(CMV)抗体価の上昇などよりサイトメガロウィルスによる十二指腸炎と診断された.全身性巨細胞封入体症の剖検例の報告は多いが,生前内視鏡的に観察された症例は極めてまれであり,十二指腸病変の報告は本邦では見あたらない.ここに若干の文献的考察を加え報告した.