症例は,70歳男性.全身倦怠感,臍周囲より右下腹部にかけての不快感を主訴に来院.下部消化管内視鏡検査にて回腸末端にびらん,小潰瘍を認め,小腸X線検査を施行したところ空腸に回虫を認めピランテル・パモエートにて駆虫した.その2カ月後下部消化管内視鏡検査を施行したところ,下行結腸に全長約5mmの白い虫体を認めた.その形態および虫卵像より蟯虫症と診断し,再びピランテル・パモエートにて駆虫し,以後経過観察中である.本症例のように,内視鏡的に蟯虫を観察した報告は過去10年間の医学中央雑誌にて調べ得た範囲にはなく,きわめて稀と考えられ報告した.