日本消化器内視鏡学会雑誌
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内視鏡下に観察される発赤と表層性胃炎に関する病理組織学的検討
斎藤 洋子斎藤 澄中原 朗福富 久之
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1992 年 34 巻 1 号 p. 39-47_1

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抄録

表層性胃炎は内視鏡的には発赤を指標として診断されることが多い.そこで表層性胃炎における発赤所見とその組織学的な特徴を対比することを目的として,内視鏡下に観察された発赤部粘膜225カ所(斑状発赤147個,点状発赤45個,Kammrötung33個)と非発赤部粘膜73カ所(凹凸・腫大40個,平坦部33個)を対象として組織学的な検討を行った.組織学的に急性炎症所見とされる浮腫・充血・好中球浸潤の出現頻度は発赤部で85.8%,平坦非発赤部で54.5%と発赤部が有意に高かった(p<0.01).発赤部と非発赤部の背景粘膜の萎縮の程度を組織学的に比較すると,ほとんど正常がそれぞれ14%・19%,軽度萎縮が29%・14%,中等度萎縮が34%・37%,高度萎縮が23%・30%であり,発赤部と非発赤部に差は認められなかった.以上より,発赤は粘膜の萎縮の程度とは無関係に急性炎症に関連して出現していることが示唆され,慢性表層性胃炎の指標としては適切でないと思われた.

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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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