日本消化器内視鏡学会雑誌
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消化管病態生理と内視鏡胃・十二指腸の病態生理と内視鏡
小林 絢三
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1992 年 34 巻 10 号 p. 2420-2431

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抄録

 消化管における種々の疾病は,形態学上,それぞれに特徴ある変化をもたらす.それと同時に形態上の変化は,消化管の機能に影響を与え,病像として認識しうる状態となる.それ故に,消化管の特異性として,多くの疾病は機能異常を介して病態を表現する. したがって,消化管の病態生理学的追求には,機能異常をどのようにとらえるかが重要であり,そのためには消化器内視鏡は必須の方法論といえる. 胃粘膜の微細観察とくに微細血管像,すなわち,微細血管の新生の程度,およびその走行の性状が潰瘍の難易度に大きく関係する.十二指腸粘膜の微細構造,特に絨毛内毛細血管網が,種々の消化管ホルモンの負荷により変化することから,物質のdigestionの過程を内視鏡的にとらえることの可能性を示した.十二指腸炎を臨床的に確かなentityとして確立させる必要性と,球部炎と全十二指腸炎とは異なった病態であることを強調したい. 消化性潰瘍の治療の目的は,再発のない真の意味の潰瘍治癒を求めることにあるということから,潰瘍治癒の質(quality of ulcer healing=QOUH)の概念が生まれた.その判定に,電子内視鏡(色素内視鏡),螢光内視鏡ならびに超音波内視鏡は有力な手段となる. Helicobacter Pylori(HP)の存続は,胃潰瘍ならびに胃炎の消長に大きく影響する.しかし,その存在は必ずしも均一ではない.Hpの産生するアンモニアが胃内pHを上昇させ,赤キャベツ色素を青変させることに着目し,Hpの胃内分布の可視化に成功した. 内視鏡器機の開発以上に,病態生理の基本的かつ基礎的な所見を蓄積することが,消化管の病態の把握ならびに治療に欠くことの出来ない多くの情報を提供してくれること,同時にこれが病因の解明にも貢献するであろうことを強調したい.

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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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