日本消化器内視鏡学会雑誌
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肝動脈塞栓療法に伴う上部消化管病変の検討(第2報)
―雑種犬を用いた基礎的検討―
平沼 孝之対馬 健祐島倉 秀也山口 高史斉藤 洋子樫村 博正中原 朗田中 直見福富 久之大菅 俊明
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1992 年 34 巻 11 号 p. 2565-2575

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抄録

 肝動脈塞栓療法に伴って発生する急性胃粘膜病変の原因は,塞栓物質の胃動脈内への逆流によるところが大きいとされている.今回われわれは,塞栓物質の種類により,病変の発生率,形態,発生機序に差があるかどうかを明らかにすることを目的として,雑種犬を用いた基礎的検討を行った.雑種犬を5群に分け,それぞれ,セルジンガー法により,胃大網動脈にカテーテルを挿入し,塞栓物質を動注した.Lipiodol単独動注群では胃粘膜血流の低下は一過性であり,発赤病変が17%(1/6)に観察されたが,明らかな潰瘍性病変は発生しなかった.MMC単独動注群では,胃粘膜血流は低下しなかった.従って組織の虚血とは異なる機序で発赤病変(60%, 3/5)が出現したものと思われる.Lipiodol-MMc懸濁液動注群では,胃粘膜の虚血状態は長引き,潰瘍性病変の発生率(57%, 4/7)が高かった.この成因は懸濁液が,胃粘膜組織に長く停滞するための虚血作用と,MMCの組織傷害作用の相乗効果によるものと思われた.Gelfoam Powderでは,胃粘膜血流の低下は,Lipiodol-MMC懸濁液と同様に長引き,虚血作用によると思われる潰瘍性病変の発生率(100%, 6/6)が高かった.1mm角Gelfoam片では,Lipiodol単独の場合と同様に,胃粘膜血流の低下は,一過性であったが,びらん,発赤の出現(50%, 2/4)を認めた.PG-E1誘導体を予防的に投与すると,胃粘膜血流が増加し(137.2%),コントロール群に比し,虚血性胃粘膜病変の発生率は低下した(100%→50%).

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