日本消化器内視鏡学会雑誌
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ERCPよりみた膵疾患
小越 和栄
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1993 年 35 巻 10 号 p. 2533-2542

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抄録
 1969年来われわれはERCPを行っており,その結果について種々の発表を行ってきた.この度は,それらの発表データーのうち膵に関する基礎的なデーターをまとめた. 第一の主題としてはERCP後の高アミラーゼ値症の機序であるが,主膵管内に造影剤が注入されることにより,それまで膵管内に充満していた膵液は通常閉鎖されている膵管の末端にあるtight junctionを開かせ,膵細胞外に流出し最終的に血管内に入り,ERCP後の高アミラーゼ血症を引き起こす.ERCP後に膵管及び膵実質に障害を起さない場合は2時間を限度に血清アミラーゼ値は序々下降し翌日には正常化する.ERCPで膵障害を起した例は2時間を経過してもアミラーゼは下降しない. 主膵管の形態は横L字型が多く,開口部は第二腰椎の上縁にあり年齢とともに下降する. 主膵管の口径は膵頭部で3mmまでが正常で4mmを越えると拡張と言える.その口径は年齢とともに拡張の傾向がある. pancreas divisumはそれ自身では膵炎の原因にはならないが,副乳頭開口部が小さいためドレナージ効果が悪い例があり,それらは膵炎と結びっき易い.またdivisumとは異なるが腹側膵管と背側膵管の癒合部に狭窄を示す癒合不全例では膵炎を起し易い. 日本消化器病学会の診断基準による慢性膵炎症例の膵管像をみると,膵石や仮性嚢胞の症例は男性でアルコールによるものが多く,主膵管の拡張など膵管がらみの所見は胆石によるものが多く含まれていた. 膵癌はERCP所見によって4型に分類している.予後に関しては粘液産生性膵癌は別として,主膵管の閉塞型が一番良く,ついで狭窄型であった.主膵管がtaperingを示す例は生存日数も短く,肝転移も一番多かった.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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