日本消化器内視鏡学会雑誌
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胃底腺ポリープ症例の背景胃粘膜に関する臨床的検討
―特に胃癌症例との対比について―
上村 直実向井 俊一山口 修司土井 謙司岡本 志朗春間 賢隅井 浩治梶山 梧朗杉山 敏郎
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1993 年 35 巻 11 号 p. 2663-2671

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抄録
胃底腺ポリープ症例(FGP)99例および胃癌症例139例を対象として,その背景胃粘膜について対比検討した結果,1)FGP症例における内視鏡像の特徴は萎縮に乏しく,合併病変としては櫛状発赤を53%と高率に認め,胃癌との合併は認めなかった.2)血清Pepsinogen(PG)値の検討では,FGP症例は血清PGII値が低値を示し,胃癌症例に比し血清PGI/II比が著明な高値を呈した.3)前庭部ウレアーゼ活性の検討では,FGP症例は20症例全例陰性であった.胃癌症例も56例中29例(52%)が陰性であったが,血中のHelicobacter pylori(HP)抗体価は高値を呈していた.FGP症例は血中のHP抗体価も低値であったことから,FGP症例はHPに対して非感染であり,胃癌症例はHP感染後と考えられた.以上より胃底腺ポリープ症例は,胃癌発生の低リスク群に位置しており,その背景胃粘膜の特徴はHPに非感染であり,血清PGI/II比が高値である点で胃癌症例と対称的であることが明らかとなった.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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