1993 年 35 巻 9 号 p. 2098-2105
内視鏡下胃生検組織材料を対象としてPCNA(proliferating cell nuclear antigen)免疫組織化学的染色を施行し,胃生検組織診断基準によるGroup分類所見と対比検討した.GroupIおよびII症例においてはPCNA陽性細胞は増殖細胞帯にほぼ一致して分布し,GroupIII病変では異型腺管巣部で比較的規則正しく帯状に分布しているのに対して,GroupIVおよびV病変では異型腺管巣全体に不規則に分布していた.一方,GroupIII,IV,V病変での異型腺管巣部におけるPCNA標識率に差異を認め,GroupIV病変はPCNA陽性細胞の分布状態と標識率においてもGroupV病変に類似していた.PCNA染色は簡便で,病理組織像との対比も明瞭であり,免疫組織化学的な増殖細胞マーカーの一つとして臨床応用が可能で,胃生検組織診断時の補助診断法となりうる可能性が示唆された.