日本消化器内視鏡学会雑誌
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十二指腸潰瘍の臨床病理学的検討
-病理組織およびHelicobacter pylori検出率からみた線状潰瘍と単発潰瘍の違いについて-
金沢 雅弘
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1994 年 36 巻 1 号 p. 3-15

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抄録

十二指腸の線状潰瘍は再燃,再発が多く,単発潰瘍,特に幽門輪直下のものは再発が稀である.この違いを明らかにする目的で,手術材料を用いて病理組織ならびに生検材料を用いてHelicobacter pylori(H.pylori)検出率を検討した.切除標本は胃癌その他の病変で切除され,手術前に瘢痕を含む十二指腸潰瘍が内視鏡的に確認され,かつ同病変が病理組織学的に十分検討可能であった症例で,その内訳は線状潰瘍5例,幽門輪直下の単発潰瘍7例であった.線状潰瘍は瘢痕を含め潰瘍が連続して認められ,その深さは最も浅い所でUl-II,最も深い所でUl-IVであった.幽門輪直下の単発潰瘍の深さは,Ul-IIが5例,Ul-IIIが2例で,Ul-IVの潰瘍はみられなかった.H.pyloriの検出は,119例の生検材料を用いて蛍光抗体法により行なった.球部粘膜における検出率は,線状潰瘍活動期あるいは治癒期(オ-プン)18.5%,同瘢痕23.1%,幽門輪直下の単発潰瘍オ-プン20.0%,同搬痕13.6%で,有意差は認められなかった.一方,胃粘膜における検出率は,線状潰瘍オ-プン80.6%,同瘢痕70.4%,幽門輪直下の単発潰瘍オ-プン100%,同瘢痕31.8%で,幽門輪直下の単発潰瘍瘢痕は有意に低率であった. 結論として,線状潰瘍はUl-III以上の潰瘍で,その胃粘膜におけるH.pylori感染は持続的であったが,幽門輪直下の単発潰瘍はUl-IIないしはUl-IIIの比較的浅い潰瘍で,その胃粘膜におけるH.pylori感染は一時的なものであった.これらの違いが両者の病態に関係しているものと考えられた.

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