日本消化器内視鏡学会雑誌
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巨大食道潰瘍を呈したべーチェット病の1例
楢原 啓之中西 孝至清原 達也坂村 泰久金山 周次奥野 優篠村 恭久松沢 佑次原 正浩森 俊雄
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1994 年 36 巻 6 号 p. 1211-1216_1

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抄録

 べーチェット病として経過観察中に巨大な食道潰瘍が出現し,その進展様式と治癒過程を観察し得た1例を経験した.症例は19歳,男性.昭和61年よりべーチェット病として経過観察中,平成2年5月に嚥下痛・胸骨後部痛が出現.内視鏡検査にて食道中下部にしもふり状のびらんを認めた.6月の内視鏡検査ではキッシング状の潰瘍となり,7月には厚い白苔に覆われたほぼ全周性の潰瘍へと進展した.また食道潰瘍の増大とともに白血球増多等の炎症所見を認め,回盲部病変も出現した.プレドニゾロンの投与にても改善はみられなかったが,Total parenteral nutrition(TPN)療法を開始したところ回盲部病変は改善し,また食道潰瘍は徐々に縮小し炎症所見の改善とともに治癒した.べーチェット病に伴う食道潰瘍は円形で浅いものが多数報告されているが,広範囲にわたる巨大なものも重症の難治例に報告されている.本症例でみられた食道潰瘍は,経過中多彩な像を呈し,ほぼ全周性の巨大潰瘍へと進展した.本症例に合併した食道潰瘍は広範囲にわたる巨大な潰瘍であったが,TPN療法が有効であり治癒せしめることができた.

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