1990年~1994年の5カ年の間に, 消化性潰瘍の薬物療法を開始した症例2,612例を対象として, その診療記録を基に維持療法の運用状況を調査し, 以下の事が明らかになった. 1.全体の9/10の症例に維持療法が施行されていた. 2.維持療法の薬剤としては多剤併用(攻撃因子抑制薬と防御因子増強薬の併用)の症例が多かった. 3.若い年齢階層ほど維持療法期間が短く, 服薬コンプライアンスも低下する傾向を認めた. 4.初期治療・維持療法が不成功 (増悪または再発) に終わった事実が内視鏡検査によって確認された症例は, 全体のほぼ1/4を占めていた. 5.維持療法の中止・脱落例は全体のほぼ3/5を占めていた. 脱落の大きな原因は患者の自己判断による治療の中止と医師の維持療法管理の不完全性にあった. 以上より消化性潰瘍の維持療法はその運用面において, 大きな問題をはらんだ療法であると考えられた.