日本消化器内視鏡学会雑誌
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Crush syndromeの経過中に認められた中部食道潰瘍の1例
宇都宮 直子中尾 大成大萩 晋也三家 登喜夫南條 輝志男
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1997 年 39 巻 6 号 p. 1078-1082

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抄録

 症例は40歳,ペルー人,男性.1995年1月17日,阪神淡路大震災に遭遇し,crush syndromeによる腎不全となり,20日当院に転院した.透析導入にて全身状態は徐々に改善し,24日より経口水分を開始したところ,その翌日,前胸部痛と下血を認めたため,緊急内視鏡を施行した.食道中部に鮮血を伴うびらん性病変と多発性の小さな血腫を認めたが,胃,十二指腸には病変を認めなかった.絶食とプロトンポンプインヒビター,粘膜保護剤の投与により自覚症状は速やかに改善し,1カ月後の内視鏡検査では同部は顆粒状の白帯を伴う潰瘍性病変を呈し,ルゴール染色では不染帯として確認された.病理組織検査では好中球と組織球の浸潤を伴った壊死性組織から成り,上皮成分は認められなかった.以上より,本症は多発性粘膜下血腫の破綻による中部食道潰瘍と診断したが狭窄などの後遺症は認められなかった.

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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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