日本消化器内視鏡学会雑誌
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39 巻, 6 号
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  • ― 臨床的経過およびHelicobacter pylori除菌療法との関連性について―
    東納 重隆, 青野 茂昭, 永尾 重昭, 川口 淳, 加藤 真吾, 山口 勉, 黒木 雅彦, 目鼻 靖, 宮原 透, 丹羽 寛文, 日野 邦 ...
    1997 年 39 巻 6 号 p. 1043-1053
    発行日: 1997/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     周波数20MHzの細径超音波内視鏡プローブを用いて,十二指腸潰瘍患者103例,231病変に対して超音波内視鏡検査(EUS)を実施し,十二指腸潰瘍の潰瘍構造について検討した.また,Helicobacter pylori(H.P.)除菌治療と治癒過程との関連性についても検討した.通常の内視鏡的病期分類と超音波内視鏡的病期分類の相関は極めて良好であった.十二指腸潰瘍に特徴的な超音波内視鏡像として,第5層の漿膜に相当する高エコー層の外側に連続して局在する高エコー像が観察された.この所見はUl-IV の潰瘍に多く認められ,切除標本の検討からも,潰瘍の炎症の波及による漿膜および漿膜下組織の肥厚を反映したものと推測された.この高エコー像の存在はU1-IV 潰瘍の診断に有用と考え,SR(serosa)と表記した.潰瘍の再発例を検討すると,低エコーの潰瘍エコーの内部に高エコー領域が広汎に存在した.潰瘍の型別の比較においては,単発潰瘍,接吻潰瘍に比較し,線状潰瘍は有意に潰瘍が深い傾向を示した.特に,線状潰瘍のridgeにおいては深部の固有筋層の変形が著明で,潰瘍の易再発性に関与していると推測された.H.P.除菌治療と超音波内視鏡像との関連をみると,除菌群では除菌治療12週後のEO移行率が非除菌群に比し有意に高く,除菌により潰瘍深部の治癒状況も促進されることが明らかとなった.
  • 千野 修, 幕内 博康, 菅野 公司, 島田 英雄, 水谷 郷一, 西 隆之, 田仲 曜, 大芝 玄, 町村 貴郎, 佐々木 哲二, 田島 ...
    1997 年 39 巻 6 号 p. 1054-1061
    発行日: 1997/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     食道アカラシアは下部食道噴門部の運動機能障害に起因した良性疾患であり,食道癌を合併する頻度が比較的高いと言われている.教室では1996年までにアカラシア50症例を経験しており,このうち食道癌の合併は6例で12.0%の発生率であった.年齢は48~70歳,男性4例,女性2例,食道造影によるX線分類ではフラスコ型2例,S状型4例,拡張度II 度3例,III 度3例である.4例がアカラシア術後で発症後食道癌発生までの期間は13~30年であった.病型分類では進行癌2例,表在型4例であり,治療内容は外科的切除術5例,内視鏡的粘膜切除術1例である.また,本邦報告例62症例を集計し,臨床病理学的検討を行い文献的考察を加えた.食道アカラシア合併食道癌の診断にあたり食物残渣の影響,生検診断の困難性など内視鏡診断の問題点について報告し,食道アカラシアの長期にわたる経過観察の重要性について述べた.
  • 野見山 祐次, 渕上 忠彦, 八尾 恒良, 瀬尾 充, 岩下 明徳
    1997 年 39 巻 6 号 p. 1062-1071
    発行日: 1997/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     切除標本上,肉眼的に病変の存在が指摘できた多発胃癌141例,302病変を対象とした.そしてその術前診断によって正診群と見逃し群に分け両群を統計学的に比較して見逃しの原因を明かにすることを目的とした.単変量解析で全病変を比較したところ,両群間に有意差を認めたのは深達度m,最大径5mm以下,幽門部,小彎の病変であった.副病変のみの比較で両群間に有意差を認めたのは最大径5mm以下,幽門部,小彎の病変であった.多重ロジスティック回帰分析を行ったところ,全病変を対象にした場合,有意に見逃し群に多い要因は,深達度mの病変(相対危険度,R.R:2.420),最大径5mm以下の病変(R.R:9.591),幽門部(R.R:4.786),副病変のみの分析では最大径5mm以下の病変(R.R:5.456),幽門部(R.R:3.268)であった.以上の成績から多発癌の見逃しを防ぐためには5rnrn以下の病変と幽門部の病変を見逃さないことが重要であり内視鏡的,外科的治療前に側視鏡による通常内視鏡のほかに色素散布法や直視鏡による幽門部の観察が必要と考えられた.
  • ―誤嚥義歯症例への応用―
    小林 壮光, 遠山 三四夏, 武井 崇, 赤保内 良和, 塚田 彰子, 木村 裕一, 佐藤 幸彦, 宮地 敏樹, 柴田 香織, 得地 茂, ...
    1997 年 39 巻 6 号 p. 1072-1077
    発行日: 1997/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    フード法は,先端部に円錘型フードを装着した内視鏡を用いる,内視鏡的異物摘出術の手技のひとつである.われわれはこのフード法を,通常の内視鏡的異物摘出術では摘出困難であった義歯誤嚥の2症例に応用し,消化管の生理的狭窄部粘膜を損傷させることなく円滑に義歯を摘出し得た.用いたフード(山本らにより供与)は,内視鏡の直径より大きな義歯表面を覆うことができ,本法は内視鏡的義歯摘出術にも応用可能であると思わた.
  • 宇都宮 直子, 中尾 大成, 大萩 晋也, 三家 登喜夫, 南條 輝志男
    1997 年 39 巻 6 号 p. 1078-1082
    発行日: 1997/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は40歳,ペルー人,男性.1995年1月17日,阪神淡路大震災に遭遇し,crush syndromeによる腎不全となり,20日当院に転院した.透析導入にて全身状態は徐々に改善し,24日より経口水分を開始したところ,その翌日,前胸部痛と下血を認めたため,緊急内視鏡を施行した.食道中部に鮮血を伴うびらん性病変と多発性の小さな血腫を認めたが,胃,十二指腸には病変を認めなかった.絶食とプロトンポンプインヒビター,粘膜保護剤の投与により自覚症状は速やかに改善し,1カ月後の内視鏡検査では同部は顆粒状の白帯を伴う潰瘍性病変を呈し,ルゴール染色では不染帯として確認された.病理組織検査では好中球と組織球の浸潤を伴った壊死性組織から成り,上皮成分は認められなかった.以上より,本症は多発性粘膜下血腫の破綻による中部食道潰瘍と診断したが狭窄などの後遺症は認められなかった.
  • 足立 経一, 末次 浩, 石村 典久, 勝部 知子, 鍛冶 武和, 串山 義則, 石原 俊治, 天野 和寿, 平川 和也, 天野 祐二, 渡 ...
    1997 年 39 巻 6 号 p. 1083-1088
    発行日: 1997/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は,75歳女性.胃の隆起性病変の精査,加療目的で入院.食道一胃接合部直下に有茎性の粘膜下腫瘍を認め,留置スネアにて基始部を結紮したのち内視鏡的ポリペクトミーを施行した.病理組織学的には粘膜下層に嚢状に拡張した固有胃腺管の集合を認め,過誤腫様ポリープと診断した.稀な症例と考えられ,内視鏡的ポリペクトミーが施行された胃過誤腫様ポリープの本邦報告例の文献的考察を加え報告した.
  • 萩野 晴彦, 藤澤 貴史, 坂下 正典, 友藤 喜信, 黒田 信稔, 阪本 哲一, 前田 哲男, 中原 貴子, 前田 光雄, 西上 隆之
    1997 年 39 巻 6 号 p. 1089-1093
    発行日: 1997/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     患者は48歳男性で,十二指腸潰瘍経過観察中,上部消化管内視鏡検査にて十二指腸第3部に大きさ7mmのIIc+IIa型十二指腸腫瘍を認めた.赤色調で陥凹辺縁は星芒状の不整を呈している.生検組織で高分化腺癌が強く疑われ,深達度はmと考えられたため,4点固定法による内視鏡的粘膜切除を試みた.しかし穿孔性腹膜炎を併発し,膵頭十二指腸切除術を施行した.腫瘍は低異型度の高分化腺癌で0IIc+IIa,tubl,m,ly0,v0,n0であった.自験例とともに陥凹型早期十二指腸癌本邦報告例16例17病変の臨床病理学的検討を加えて報告した.陥凹型早期十二指腸癌は10mmを越えるとsmに浸潤すると推測され,内視鏡的治療の適応は10mm以下,tubl,深達度mと考えられたが,病変の占拠部位も大きな要因である.
  • 青木 茂, 山田 潤一, 藤岡 俊久, 岩田 章裕, 茂山 潤鐘, 宮木 知克, 大原 弘隆, 星野 信, 伊藤 誠
    1997 年 39 巻 6 号 p. 1094-1098
    発行日: 1997/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は77歳女性.検診にて胆道内気腫を指摘され来院.腹部単純X線写真,超音波検査,CTで胆道内気腫を認めた.内視鏡的膵胆管造影で総胆管から十二指腸傍乳頭憩室内へ造影剤の漏出を認め,さらに憩室内の瘻孔からカテーテルを挿入し造影すると,総胆管が描出され,総胆管十二指腸憩室瘻と診断した.自験例のような傍乳頭憩室と総胆管に瘻孔を有する症例は本邦でも5例と少なく,貴重な症例と考え報告した.
  • 矢部 正浩, 五十嵐 健太郎, 畑 耕治郎, 何 汝朝, 月岡 恵, 渋谷 宏行
    1997 年 39 巻 6 号 p. 1099-1104
    発行日: 1997/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は47歳,女性.主訴は下痢,血便,下腹部痛.大腸内視鏡検査で全大腸粘膜に不均一な血管透見性不良,上行結腸に斑状発赤を,直腸からS状結腸にアフタ様潰瘍,粘膜肥厚,微細陥凹を認めた.生検で粘膜表層上皮直下の束状の膠原線維増生と粘膜固有層全体の炎症細胞浸潤を認め,collagenous colitisと組織診断された.本症は内視鏡所見に乏しいとされるが,本例では特異な内視鏡所見を認めたので報告する.
  • 濱本 博美, 山本 博, 木村 弥都子, 鈴木 貴博, 島 修司, 松枝 和宏, 脇谷 勇夫, 土居 偉瑳雄, 矢野 慧
    1997 年 39 巻 6 号 p. 1105-1112
    発行日: 1997/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例1は64歳男性で,便潜血陽性の精査のため当院を受診したところ,直腸S状部に1cm大の粘膜下腫瘍様の大腸癌を認めた.切除の結果中分化型腺癌で,深達度はsmであった.症例IIは76歳女性で,残便感を自覚して受診した際に,直腸に3.5cm大の粘膜下腫瘍様の直腸癌を指摘された.切除の結果は粘液癌で,深達度はa1であった.粘膜下腫瘍様の形態を示す大腸癌の報告は稀であり,その発育進展様式について考察を加え,報告する.
  • 渡辺 憲治, 松本 誉之, 中村 志郎, 藤次 京子, 谷口 道代, 佐田 玲子, 小池 一成, 押谷 伸英, 大川 清孝, 北野 厚生, ...
    1997 年 39 巻 6 号 p. 1113-1118
    発行日: 1997/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     大腸内視鏡検査を施行した病原性大腸菌O157による腸炎の2例を報告した.症例1は60歳女性,下行結腸に縦走潰瘍を認めた.症例2は18歳女性,回盲部を中心に潰瘍の多発と浮腫による管腔の伸展不良を認めた.下血の精査目的で行われる本疾患の内視鏡では,病期や重症度,観察範囲などにより,虚血性腸炎や他の感染性腸炎と鑑別を要する多彩な内視鏡像を認める可能性があり,便培養などと併せ鑑別診断することが肝要と思われた.
  • ―内視鏡像を中心に―
    滋野 俊, 松沢 正浩, 金児 泰明, 清水 聡, 依田 弘史, 赤松 泰次
    1997 年 39 巻 6 号 p. 1119-1124
    発行日: 1997/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     腸管出血性大腸菌O157:H7による出血性大腸炎3例の内視鏡像について報告した.自験例および従来の報告例からその内視鏡像の特徴は以下に要約された.(1)著しい浮腫,血管透見像消失,発赤,出血,びらんが主な所見であり,これらの所見が他の感染性腸炎に比べてきわめて強い.(2)肛門側大腸に比べて深部大腸へいくほど所見が強くなり,回腸末端部や直腸はほぼ正常である.(3)しばしば縦走傾向のある潰瘍が認められる.
  • 根本 一彦, 山田 至人, 高橋 厚, 加藤 康行, 山縣 さゆり, 三富 弘之
    1997 年 39 巻 6 号 p. 1125-1131
    発行日: 1997/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は18歳男性で,1996年6月腹痛と頻回の血性水様下痢を主訴に来院し入院となった.入院後の下部消化管内視鏡検査にて,回盲部から上行結腸を中心に,全周性の著明な浮腫と暗赤色調の易出血性粘膜像,さらに壊死物質の付着を認めた.病変は連続性で,同様の所見は横行結腸からS状結腸にも認められたが,次第に軽度となり,直腸にはまだらな発赤を認めるのみであった.便培養は陰性であったが,臨床症状とPHA法によりO-157に対する抗体が陽性であった事から,ベロ毒素産生性大腸菌(O-157)による出血性大腸炎と診断した.本症の内視鏡像を経過観察し得た報告は少なく,貴重な症例と考えられた.
  • 西尾 浩志, 中澤 三郎, 芳野 純治, 乾 和郎, 山近 仁, 印牧 直人, 若林 貴夫, 奥嶋 一武, 小林 隆, 杉山 和久
    1997 年 39 巻 6 号 p. 1132-1137
    発行日: 1997/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     超音波内視鏡専用機と,この鉗子孔(径2.2mm)に挿入可能なラジアル型細径超音波プローブを併用し,胃病変に対する超音波内視鏡検査を行った.超音波内視鏡と,内視鏡下で描出部位を確認できる新細径超音波プローブを同時使用することで両画像の対比が可能となり,微細な病変に対する狙撃診断能が向上した.また,超音波内視鏡で描出困難な部位に対する検査が容易になった.本法は,細径超音波プローブによる走査法の一つとして有用であった.
  • ―実験および臨床―
    本橋 修, 佐野 秀弥, 高木 精一, 幾世橋 篤, 西元寺 克禮
    1997 年 39 巻 6 号 p. 1138-1143
    発行日: 1997/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     中・下部直腸におけるLigating deviceを使用した内視鏡的粘膜切除法(Endoscopic Mucosal Resection using Ligating device;EMRL)の安全性と確実性を雑犬を用いた基礎実験で確認した上で,下部直腸の直径10mm以下のカルチノイド2例を切除した.本法は,病変を中央にして確実かつ容易に切除できるのみならず,カルチノイドの下面と切除面の間には一様の厚さの粘膜下層組織を残存させることができ,追加治療の要否に関する病理組織学的検討が容易となるという利点もある.
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