抄録
症例は40歳の男性,タール便を主訴に当院を受診した.上部消化管造影検査にて5大弯側に山田III型の隆起性病変を認めた.上部消化管内視鏡検査では同部位に裾色調の境界明瞭な隆起性病変を認めた.生検組織診断では高分化型腺癌であった.大きさ10mmの粘膜内癌と診断し,内視鏡的に切除した.切除標本の病理組織学的検索では腺窩上皮にきわめて類似した高分化な腺窩上皮型癌で,粘液組織染色を行い,HID-AB (high iron diamine Alcian blue)染色陽性,Con A (Paradoxical Concanavarin A)染色陰性,GOS (Galactose oxidase-Schiff)染色陽性のため,腺窩上皮の形質を有する高分化型腺癌と診断した.胃底腺領域にみられる癌の大部分は未分化型癌で,分化型癌は少ないと報告されている.その臨床病理学的特徴につき自験例を含め,文献的考察を加えて報告する.