日本消化器内視鏡学会雑誌
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小腸内視鏡検査にて術前診断しえた肺癌よりの転移性小腸腫瘍の1例
田中 裕滋木村 光政小林 由直牧田 慶久吉田 康史山口 道彦越山 肇足立 幸彦
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2000 年 42 巻 2 号 p. 169-174

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抄録

 症例は53歳の男性.貧血症状を主訴に来院し,精査目的にて入院となった.胸部CTscanでは右上葉に腫瘤陰影とリンパ節腫脹を認め,気管支鏡検査にて肺癌と診断された.著明な貧血と便潜血反応陽性より消化管出血を疑うも,上部消化管および大腸に出血源は認めず.小腸造影にて粘膜像の不整と欠損を認めた.小腸内視鏡検査を施行したところ中心潰瘍を伴う隆起性病変を認め,生検により肺癌よりの転移性小腸腫瘍と術前診断した.貧血進行の防止目的で,小腸部分切除術を施行した.肺癌の小腸転移は,腸閉塞や穿孔性腹膜炎などの緊急開腹術後や剖検の病理組織所見にて診断されることが多いのに対し,本症例では高度貧血と便潜血反応陽性を契機に小腸造影および小腸内視鏡検査にて腹部症状発現前に診断し得た.

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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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