日本消化器内視鏡学会雑誌
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一過性型虚血性小腸炎の1例
丹羽 治男岡 勇二日下部 篤彦鮫島 庸一春田 純一山口 丈夫鳥井 圭子佐久間 晶子南 正明楠神 和男
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2000 年 42 巻 6 号 p. 1084-1089

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抄録

症例は,67歳の男性で,高血圧,糖尿病,胃潰瘍のため通院中,平成10年2月18日突然の腹痛,血性下痢のため入院した.理学所見で右下腹部および謄部に圧痛を認め,入院時の血液検査では強い炎症反応が認められた.腹部CTでは回腸末端の壁肥厚と空腸の拡張があり,腹部大動脈は高度に石灰化していた.同日下部消化管内視鏡検査を施行したところ,回盲弁より10cm口側の回腸から連続した縦走傾向のある不整形の浅い潰瘍を認め,その周囲の粘膜は浮腫状で発赤を認めた.生検組織の細菌培養で病原菌は同定されず,病理組織学的には粘膜の浮腫と出血,好中球を主体とした軽度の炎症細胞浸潤がみられた.保存的治療にて自覚症状・炎症所見とも徐々に軽快した.第15病日の小腸造影では,回腸末端に小潰瘍を認めた.第29病日の下部消化管内視鏡検査では,前回潰瘍のあった部位に一致した粘膜の顎粒状変化と雛壁の変形を認め,病理組織検査にてヘモジデリンの沈着を認めた.以上各種検査や臨床経過から本症例は一過性型虚血性小腸炎と考えられた.

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