抄録
【目的】外科切除された分化型胃sm癌166病変を対象にリンパ節転移危険因子を再検討し,胃sm癌EMR後の病理組織学的根治度判定基準について考察した.【結果】166病変中29病変(17%)は組織多様性を示し,先進部で低分化な像を認め,うち6病変(21%)にリンパ節転移を認めた.sm浸潤先進部も分化型の137病変のリンパ節転移率13%(18病変)と比較し高かった.sm浸潤度に関して,tub1では,水平方向の拡がりに関係なく700μm以下の病変にリンパ節転移は認めなかった.一方,tub2に関しては,垂直浸潤距離300μmの微小浸潤でもリンパ節転移を認めた.多変量解析の結果では,1y(+),INFγ,papの順で有意なリンパ節転移危険因子であった.【結論】分化型sm癌でもpap,tub2ではリンパ節転移が高頻度であり,EMRによる根治は困難と考えられた.しかし,INFαのtub1で,ly(-)の病変は,1例もリンパ節転移を認めず,浸潤先進部tub1でly(-)のsm微小浸潤癌はEMRで根治できる可能性が示唆された.