抄録
症例は52歳女性,上腹部痛を主訴に来院.既往として2年前より特発性血小板減少性紫斑病を指摘されていたが,自覚症状無く放置していた.胃内視鏡にて,上部食道から胃食道接合部を越え胃内にまで進展した微量の出血を伴う巨大粘膜下血腫を認め,当日入院となる.入院時血小板数は1.6×10/μlであったが,下血・貧血を認めず.血小板輸血,プレドニゾロンによる加療を開始し,血小板増加は不十分であったが保存的に軽快した.2週間後の内視鏡によって上部食道から食道胃接合部に及ぶ広範囲な浅いびらん面の形成を認めた.2カ月後の内視鏡にて,食道粘膜面は浅い陥凹となり,粘膜の再生を認めた. 特発性血小板減少性紫斑病症例の消化管出血は一般的な主訴であるが,食道の粘膜下血腫を呈する症例はまれであり,さらに粘膜下血腫の治癒過程を経時的に観察しえたので,若干の文献的考察を加え報告する.