2024 年 44 巻 169 号 p. 11-14
近年,私たちに身近な動物,植物,菌類といった目に見える大型の生物の多様性は生物多様性のごく一部にすぎず,原生生物といわれる単細胞真核生物が真核生物の多様性を担っていることが明らかになった.原生生物はエネルギーループ通じて環境に影響を与えることがしられており,地球環境の理解と保全には原生生物が環境にもたらす影響を考慮することが重要である.この際,原生生物の環境中での分布を知ることが重要であるが、この分布は微視的には個々の原生生物の行動に還元される.激変する環境の中で原生生物は自身のおかれた状況に応じて生存のための行動を行う.この行動こそが環境中での原生生物の分布を実現していると考えられる.この考えに基づいて私は原生生物の行動や,その運動機構に着目し研究を行ってきた.本稿では近年,私が関わった原生生物の行動,運動研究に関して概説する.