日本消化器内視鏡学会雑誌
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ワーファリン内服中に広範な大腸粘膜剥離を来たした1例
荻野 治栄久保 茂三澤 正奈須 俊史井原 裕二貞元 洋二郎原田 直彦
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キーワード: 大腸粘膜剥離
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2005 年 47 巻 1 号 p. 22-27

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抄録

症例は77歳,女性.ワーファリン内服中下血を来たし来院.当日施行した大腸内視鏡検査にて,半透明の剥離粘膜片がS状結腸に逸脱し,その根部がS状結腸―下行結腸移行部に全周性に付着していた.同日施行した注腸X線検査では,造影剤にて剥離粘膜は下行結腸へ容易に翻転し,長さ20cmに及ぶ下行結腸の浮腫状の変形が描出された.治療はワーファリン内服中止と絶食,補液を行った.症状,出血が改善したため食事,ワーファリン内服を再開したが,再度下血を来たしたため再び内服を中止し,絶食とした.その後,粘膜剥離部はほとんど狭窄を残さず治癒した。大腸の全周性粘膜剥離はまれであり,本症例はワーファリンによる出血傾向のために大腸に粘膜下血腫が形成され,粘膜剥離を生じたと考えた.

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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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