日本消化器内視鏡学会雑誌
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スキルス胃癌の見逃しに対する裁判所の判断について
日山 亨吉原 正治田中 信治茶山 一彰
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キーワード: スキルス胃癌, 見逃し, 訴訟
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2005 年 47 巻 11 号 p. 2493-2500

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抄録
 これまでのスキルス胃癌の見逃しが問題とされた民事裁判判決5例を検討した.従来はスキルス胃癌は進展が早く,予後も非常に悪いことから,仮に見逃されずにその時点で治療が開始されたとしても延命の可能性がなかったとして,病院側に対する損害賠償請求が棄却される事例が多かった.しかし,平成16年1月15日に最高裁は診断が2 .7カ月遅れた事例において,病状が進行した後に治療を開始するよりも,治療の開始が早期であればあるほど良好な効果を得られた可能性があり,患者がその死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性があったとして,病院側の責任を認めた.近年ティーエスワン(テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合カプセル剤)などのスキルス胃癌にも有効性を示す抗癌剤が開発・臨床応用されてきている.上記平成16年の最高裁判決は,このような医療技術の進歩を反映したものと思われ,医療技術が進歩すればそれに伴って法的に要求される医療水準も上昇することを示しているといえよう.われわれ臨床医はこのようなことを心して,日々の臨床にあたらなければならない.
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