日本消化器内視鏡学会雑誌
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47 巻, 11 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 日山 亨, 吉原 正治, 田中 信治, 茶山 一彰
    2005 年 47 巻 11 号 p. 2493-2500
    発行日: 2005/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     これまでのスキルス胃癌の見逃しが問題とされた民事裁判判決5例を検討した.従来はスキルス胃癌は進展が早く,予後も非常に悪いことから,仮に見逃されずにその時点で治療が開始されたとしても延命の可能性がなかったとして,病院側に対する損害賠償請求が棄却される事例が多かった.しかし,平成16年1月15日に最高裁は診断が2 .7カ月遅れた事例において,病状が進行した後に治療を開始するよりも,治療の開始が早期であればあるほど良好な効果を得られた可能性があり,患者がその死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性があったとして,病院側の責任を認めた.近年ティーエスワン(テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合カプセル剤)などのスキルス胃癌にも有効性を示す抗癌剤が開発・臨床応用されてきている.上記平成16年の最高裁判決は,このような医療技術の進歩を反映したものと思われ,医療技術が進歩すればそれに伴って法的に要求される医療水準も上昇することを示しているといえよう.われわれ臨床医はこのようなことを心して,日々の臨床にあたらなければならない.
  • 鈴木 眞由美, 大野 祥一郎, 定本 貴明, 杉本 元信
    2005 年 47 巻 11 号 p. 2501-2508
    発行日: 2005/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     【背景・目的】重症心身障害児(者)には消化器症状をしばしば認めるが,これまで上部消化管内視鏡所見の詳細な検討はない.今回,Helicobacter pylori(以下H.pylori)感染と食道・胃・十二指腸病変を検討した. 【方法】消化器症状を有する重症心身障害児(者)38名に上部消化管内視鏡検査を実施,H.pyloriを迅速ウレアーゼ法と培養法により検討した. 【結果】H.pylori陽性率は71.1%であった.年代別では20歳未満が100%と最も多かった.陽性率は心身障害の重症度高度例,吐血例で高い傾向がみられ,抗潰瘍薬の内服例で低い傾向がみられた.内視鏡的には20歳未満でも食道裂孔ヘルニア,逆流性食道炎,萎縮性胃炎が高頻度にみられた. 【結論】重症心身障害児(者)は若年者においてもH.pylori感染率が高く,加齢とともに生じる病変が早期から出現することが明らかとなった.
  • 岡 茂樹, 鈴木 一義, 小泉 和人, 市村 博紀, 高橋 盛男
    2005 年 47 巻 11 号 p. 2509-2515
    発行日: 2005/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     大腸polypectomyの後出血の要因について多変量解析を行い検討した.検討症例は660症例1,454病変である.この中で術後出血を22症例23病変に認め,その頻度は3 .3%であった.抗凝固剤,抗血小板剤の服用者は660例中84例に認めたが,大腸polypectomy前後1週間,計2週間の服薬中止にすると後出血は0例であった.さらに後出血の危険因子について単変量解析(univariate analysis)を行った結果,各独立因子別に有意な危険因子は,年齢,切除方法,病変の大きさ,組織学的異型度であった.これらの有意な危険因子に関して多変量解析(multivariate analysis)を行った結果,組織学的高異型度が最も危険率が高かった(OR:5.8,95%CI:1.5-22.8).
  • 楯 英毅, 野崎 良一, 村田 隆二, 淵本 倫久, 山田 一隆, 高野 正博
    2005 年 47 巻 11 号 p. 2516-2522
    発行日: 2005/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     【背景・目的】クローン病小腸病変の描出能をCTによるvirtualendoscopy(VE),内視鏡像および小腸造影像で比較し,クローン病小腸病変に対するVEの有用性について検討した.【方法】対象はクローン病6例(大腸小腸型4例,小腸型2例) .全大腸内視鏡検査に引き続きCT撮影を行い,VE画像を作成した.【結果】バウヒン弁から平均55cmまで回腸内腔をVEで観察することができた.内視鏡および小腸造影で確認した回腸の縦走潰瘍,狭窄病変はそれぞれ100%,不整型潰瘍は50%の正診率で描出することができた.【結論】VEは内視鏡,小腸造影と比較してもクローン病の回腸病変の描出能は遜色なく,今後有用な検査法になると考えられた.
  • 平澤 欣吾, 粉川 敦史, 富田 尚彦, 斎藤 紀文, 田中 克明, 今田 敏夫, 野澤 昭典, 堀内 襄二
    2005 年 47 巻 11 号 p. 2523-2529
    発行日: 2005/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は56歳女性.注腸X線検査にて,S状結腸に10mm大の粘膜下腫瘍(submLicosaltumor以下SMT)を認めた.大腸内視鏡検査にては,同部位に褪色調で頂部に浅い陥凹を伴うSMT様病変を認めた.内視鏡的に一括摘除した病理標本では,腺腫成分の合併のない高~ 中分化型denovo癌であった.さらに粘膜表面に露出する腫瘍はわずかで大部分は正常粘膜に覆われて粘膜深部に突出する形で存在し,粘膜筋板を越えて浸潤していなかったことより,粘膜下腫瘍様の形態を呈した深達度mの稀少な大腸癌であった.
  • 所 知加子, 安崎 弘晃, 平澤 欣吾, 内野 大輔, 横山 信之, 冨山 昌一
    2005 年 47 巻 11 号 p. 2530-2534
    発行日: 2005/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     今回われわれは,植物胃石が胃内から排出し2回の腸閉塞を起こしたが,大腸内視鏡にて経肛門的に摘出しえた稀な1例を経験したので報告する.症例は74歳女性.嘔気と食欲低下を主訴に来院し,上部消化管内視鏡検査にて胃内に約6cmの胃石を認めた.その後,胃石は幽門を通過し小腸閉塞をおこしたが,透視下で用手的にBauhin弁を通過させた.2日後,再度胃石がS状結腸に嵌頓したが,大腸内視鏡を用いて経肛門的に摘出した.
  • 合志 聡, 小林 正明, 大嶋 智子, 黒岩 敬, 鈴木 健司, 本間 照, 青柳 豊
    2005 年 47 巻 11 号 p. 2535-2541
    発行日: 2005/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は56歳女性,心窩部痛を自覚し来院した.3カ月前より肩関節痛に対して非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDs)を内服していた.上部消化管内視鏡検査にて前庭部大彎に活動期潰瘍を認め,潰瘍に接して十二指腸球部との瘻孔が見られ,Double pylorusと診断された.Helicobacter pylori(H.pylori)は,複数の検査より非感染と確認,NSAIDsが潰瘍の原因と考えられた.薬物療法にて消化器症状,潰瘍は改善したが,Double pylorusは残存した.H.pyloriの関与が否定されたDouble pylorusの報告は2例のみと極めて少ない.Double pylorus本邦報告例170例とその中でNSAIDsの関与が考えられる25例について文献的考察を加えた.
  • 高田 博樹, 大原 弘隆, 中沢 貴宏
    2005 年 47 巻 11 号 p. 2542-2543
    発行日: 2005/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 野田 昌男, 森 伸晃, 野村 憲一, 児島 謙作, 光藤 章二, 山根 行雄, 三澤 信一, 岡上 武
    2005 年 47 巻 11 号 p. 2544-2549
    発行日: 2005/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     近年Helicobacter pylori感染とMALTリンパ腫,さらにはHelicobacter pylori感染と血小板減少性紫斑病との関連が注目されている.実際これらの疾患の中には,H.pyloriの除菌治療により改善するものがあるが,その正確なメカニズムに関しては未だ明らかにされていない.今回われわれは早期の胃MALTリンパ腫に合併した血小板減少性紫斑病の1例を報告する.この症例では胃MALTリンパ腫に対して内視鏡的粘膜切除術を施行することにより,血小板減少性紫斑病の劇的な改善を認めた.またFISH法により,H.pylori除菌治療に抵抗性を意味するt(11;18)(q21;q21)転座が検出された.治療後2年間経過観察を行っているが,明らかな再発所見を認めておらず血小板数も正常範囲内である.これは胃MALTリンパ腫の内視鏡的切除により血小板減少性紫斑病の改善を認めた初めての報告である.血小板減少性紫斑病の中にはH.pylori感染により引き起こされるものがあることが知られているが,その他の機序としてMALTリンパ腫由来のB細胞が産生する抗体により血小板減少性紫斑病が引き起こされる可能性が考えられた.
  • 責任者:真口 宏介
    真口 宏介
    2005 年 47 巻 11 号 p. 2550-2553
    発行日: 2005年
    公開日: 2024/01/29
    ジャーナル フリー
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