症例は76歳の女性.切除不能の4型進行胃癌で,幽門狭窄から経口摂取不能であったが,QOLの改善と経口抗癌剤TS-1の投与を可能とする目的でExpandable Metallic Stent(EMS)を留置した.EMS留置により患者のQOLは改善されTS-1の投与が可能となったが,抗癌剤の効果発現による腫瘍縮小によりEMSが逸脱し腸閉塞を発症したため,開腹手術による摘出を要した.EMS留置は経口摂取不能な進行胃癌患者のQOLを改善する上で極めて有効な治療法であるが,胃癌に有効な抗癌剤の出現に伴い,抗癌剤の効果発現に伴うEMS不要時の対処についての検討と回収手段の確立が必要と考えられる.