日本消化器内視鏡学会雑誌
Online ISSN : 1884-5738
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Endoscopic Sphincterotomyの偶発症と対策
平田 信人中路 聡園山 隆之串田 誉名
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2007 年 49 巻 8 号 p. 1785-1797

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抄録

 内視鏡的乳頭切開術後(EST)の偶発症につき文献的考察をおこなった.EST4時間後のアミラーゼ上昇が正常上限の5倍以上を示した症例から膵炎が発症しており発症率は0.7~5.4%であった.多変量解析による膵炎発症因子はカニュレーション困難による頻回の膵管造影,年間の症例数が少ない施設,乳頭括約筋機能不全,5mm以下の細い胆管,女性,プレカットなどが挙がっていた.膵管ステントによる発症予防は有効であるとの報告が多く認められた.臨床的な出血の頻度は0.45%~2.5%でありESTの2~3日後に多かった.出1血の因子はプロトロンビン時間の延長,EST時の出血,年間の症例数が少ない施設,プレカットなどが挙げられていた.止血には高張ナトリウム・エピネフリン液を用いている報告が多かった.熱凝固やクリップを用いる際には膵管口を塞がないよう注意する必要がある.穿孔は0.3~1.2%であった.穿孔の因子はプレカット,ビルロート・法などが挙げられていた.EST後のCTでは29%に後腹膜気腫が認められるが無症状の場合には治療が不要である.乳頭近傍の微小穿孔の場合には経鼻胆道ドレナージを併用した内科的治療のみで軽快することがあるが自由腸管壁の穿孔では手術が必要となる.

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