抄録
ESDは大きな病変でも一括切除を可能にし,正確な病理学的評価ができることが最大の利点である.その反面,従来法に比べて手技的に難易度が高く,処置に長時間を必要とする.そのために鎮静剤の過剰投与により呼吸循環抑制のリスクは高くなる.しかし,不十分な鎮静では患者の静止状態が保てず,ESDの手技そのものをさらに困難にさせてしまう.そこで当院では,2時間以上を要すると見込んだESDは,手術室での全身麻酔下で行い,全身状態に関する偶発症なく良好な成績が得られている.また,全身麻酔下でのESDは手技的にまだ安定していない導入期において,その手技に集中でき,よりよい患者状態で行うことができ,偶発症を減少させると思われた.ESDの発達の背景には,処置具や高周波発生装置の開発がある.切開用処置具には,ITナイフをはじめ数種が発売されており,その使用に際しては電気的特性の理解が重要と考えられる.また出血などに対しても,補助用処置具の使用が効果的である.ESDに用いる高周波発生装置は,奨励される設定があるわけではないが,その原理・特性を理解したうえでの使用が望ましい.