日本消化器内視鏡学会雑誌
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小腸の非ステロイド性抗炎症剤起因性潰瘍
古賀 秀樹松本 主之飯田 三雄
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2008 年 50 巻 2 号 p. 189-198

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抄録

非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)に起因する小腸傷害の疫学,診断,治療に関して文献的レビューを行った.NSAIDsによる小腸傷害の頻度は,検討方法により様々であるが,小腸内視鏡などで観察される無症候性の病変も含めると数十%にのぼる.診断に関しては,類円形潰瘍,Kerckring襞上輪状潰瘍,びらん,発赤などの粘膜傷害が認められ,カプセル内視鏡やダブルバルーン小腸内視鏡により微細な粘膜傷害も発見可能であるが,diaphragm diseaseと呼ばれる膜様狭窄や穿孔性潰瘍も特徴的である.スクリーニング,鑑別診断,治療効果の判定など目的に応じて,小腸X線検査,透過性試験,111In標識白血球を用いたシンチグラフィ,便中calprotectin濃度測定などを適宜組み合わせて行う.治療では,misoprostol,metronidazole,sulfasalazineを用いるのが一般的であるが,十分な成果が得られているとは言い難く,選択的COX-2阻害薬による発症予防やNSAIDsによる粘膜傷害の発症機序を考慮した新たな治療薬の開発も必要である.内視鏡的治療としては,膜様狭窄に対するバルーン拡張術や出血性潰瘍に対する止血術が行われている.

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