2020 年 17 巻 1 号 p. 42-45
症例は慢性腎不全に対する維持透析中の70歳台男性。腹痛を主訴に救急受診され,汎発性腹膜炎のため緊急開腹手術を施行した。術中所見から宿便による小腸穿孔の診断で小腸部分切除を施行,術後5日目に深部切開創surgical site infection(SSI)をきたし,以後創部出血をきたすなど,腹膜まで至る創部離開が遷延した。肺気腫,胃癌による幽門側胃切除術の既往もあり,基礎疾患・低栄養状態から創傷治癒遅延が予想された。創傷治癒対策として,術後9日目より窒素負荷の少ないオルニチン含有食品の投与を開始した。さらに術後23日目より,圧を適宜調整した局所陰圧閉鎖療法negative pressure wound therapy(NPWT)を行った所,安全かつ早期に創傷治癒が図れたため,文献的考察を含め報告する。