(目的)当院の消化器外科領域手術においての陰圧閉鎖療法(negative pressure wound therapy:以下,NPWT)の現状を報告し,NPWTの効果を最大限に誘導し感染創治療期間短縮化をめざす治療方針について検討した。さらに,NPWTと灌流式持続陰圧洗浄療法(negative pressure wound therapy with instillation and dwelling:以下,NPWTi–d)の有用性について比較検討した。(方法)当院外科にて2013年5月から2019年12月までに,SSIに対しNPWTを導入した消化器外科領域手術症例を検討対象とし後方視的に検討した。このうち,予後の明らかな消化器領域手術後の症例52例をNPWT終了後の治癒過程として遅延1次縫合群(9例)と2次治癒群(43例)に分類し比較検討した。(結果)NPWT開始から創治癒までの期間(中央値)は,遅延1次縫合群では11日(5〜27),2次治癒群では25日(6〜286)。遅延1次縫合群ではSSI診断後から全例16日以内にNPWTが開始されており,さらに,SSI診断からNPWT開始までの期間が長くなっても診断時から治癒までの総期間には大きな変化がない傾向にあった。当施設では2018年11月からNPWTi–dを導入した。従来法のNPWT群(43例)とNPWTi–d群(9例)に分類しSSI診断からNPWT開始までの期間を比較したところ,NPWT群は6日(0〜45),NPWTi–d群は1日(0〜15)であった。さらに,SSI診断時から創治癒までの総治療期間はNPWT群31日(11〜297),NPWTi–d群25日(5〜66)であった。(考察)SSI診断からNPWT開始までの期間が長くなったとしても十分な洗浄やデブリードマンなどによって創傷環境調整(wound bed preparation:以下,WBP)を整えてた後にNPWTを導入し,遅延1次縫合での創治癒を目指した方が結果的に総治療期間は短縮化されると思われる。NPWTi–dは,より早期からの創傷治癒治療開始を可能にし,総治療期間短縮にも寄与すると思われた。
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