日本外科感染症学会雑誌
Online ISSN : 2434-0103
Print ISSN : 1349-5755
総説
食道癌手術における周術期感染管理
鍋谷 圭宏加野 将之水藤 広桑山 直樹首藤 潔彦
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2023 年 20 巻 2 号 p. 92-100

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抄録

食道癌に対する食道切除再建術(食道癌手術)では,術後感染性合併症(postoperative infectious complication:以下,PIC)が術後短期・長期の予後不良因子となる。近年は鏡視下/ロボット支援下の低侵襲食道癌手術(minimally invasive esophagectomy:以下,MIE)が普及し,縫合不全が関与しない切開創手術部位感染(surgical site infection:以下,SSI)や遠隔部位感染である肺炎の減少に貢献している。しかし,縫合不全による臓器/体腔SSIの発症率はいまだ高く,その対策が予後向上のために重要である。これまで,手術などの治療関連因子に加えて,高齢・低栄養・併存疾患などの患者因子がPICの発症リスクとされているが,施設ごとの治療法の違いもあって対策のエビデンスは乏しい。MIE時代となったが,縫合不全の少ない安全な手術に加えて,リスクに応じて個別化された周術期管理,合併症の早期診断と適切な治療,抗菌薬適正使用などをチーム医療で行う感染管理が求められる。将来的には,食道癌と診断された患者がPICのリスク因子をできるだけ持たないような予防医学や社会栄養学の普及も,広い意味で感染管理の1つになるであろう。

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© 2023, 一般社団法人 日本外科感染症学会
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