抄録
後腹膜感染症は後腹膜に隣接する臓器の炎症,損傷,穿孔によって引き起こされる二次感染症であり,早期発見とドレナージが重要とされる。時に診療科の垣根を乗り越えて感染が波及し複数の診療科で対処を要する難治性の病態となりうるが,骨関節感染症に対する治療方法であるCLAP(continuous local antibiotics perfusion)を用いて治療し良好な結果を得た。症例1は腎膿瘍から生じ大腿まで達する巨大な後腹膜膿瘍,症例2は原因不明の後腹膜膿瘍で経皮的ドレナージを行うも敗血症で再燃した症例である。いずれも高侵襲手術が必要と考えられたがCLAPを用いることで比較的低侵襲に感染制御を得ることができた。CLAPの治療原則は5D(Detection,Design,Defense of the tissue,Do thoroughly,Disappearance of signs of infection)であり,後腹膜感染症にも同様に治療を行うことで,効果的なドレナージと高い局所抗菌薬濃度を得られ感染制御が期待できる。CLAPはさまざまな深部感染に有効である可能性があり,診療科のスキマを埋めることができる可能性がある。