2022 年 44 巻 p. 19-55
本稿では,取締役会のあり方とその企業価値への影響に関する既存研究を概観する.コーポレートガバナンス改革に後押しされ,日本企業の取締役会における社外取締役の人数は急増している.2018年には東証全体の97.7%の企業が社外取締役を任用している.取締役会構成の変化は,企業に対し,どのような影響を及ぼすのであろうか.理論研究では,取締役会の経営者に対するモニタリングとアドバイスに着目し,取締役会のあり方が議論されてきた.一方,実証研究では,取締役会の独立性を高めることにより,企業価値が向上し得ることが示されている.しかし,こうした効果はすべての企業に当てはまる訳ではない.コーポレートガバナンスの有効性を高めるためには,取締役会改革と並行し,市場システムを含むガバナンス・システム全体の整備も必要であろう.既存研究のサーベイを通し,日本企業の社外取締役増加に関するインプリケーションを考察していく.