現代ファイナンス
Online ISSN : 2433-4464
論文
年功序列賃金制度と株式需要—何故,我が国家計の株式需要は少ないのか—
米澤 康博松浦 克己竹澤 康子
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ジャーナル オープンアクセス

1999 年 6 巻 p. 3-18

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抄録

本論文では我が国の家計の株式保有比率の低水準の原因を危険回避度の差異に求めるのではなく,より経済制度的な要因に求める.以下では,原因は我が国の年功序列賃金制度,およびその制度の下での企業への見えざる出資(若年期の低賃金を上回る生産に対する貢献価値が強制的に企業に出資させられている)にあることを明らかにする.すなわち,我か国の若年家計は多額の見えざる危険資産を強制的に保有させられているので,見えざる出資がない場合に比べて更なる株式保有を行うことは合理的ではないのである.要するに日本的経営が株式投資を抑制し,より預貯金への選好を高めさせたと解釈でき,われわれの実証分析ではこれと矛盾しない結果が得られている.この結果,年功序列賃金制度に特徴づけられる日本的経営と株式非選好(預貯金の選好)とは制度補完の関係にあると図式化することができる.

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© 1999 日本ファイナンス学会/MPTフォーラム
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