2000 年 7 巻 p. 75-90
日本円オープン金利市場のタームストラクチャーを分析することにより,日銀の金融政策の効果と限界を検証するのが本稿の目的である.金融経済データはランダムウォークのような非定常プロセスとみなされることが多いため,本稿では分析の枠組みとして非定常性に対応できる方法を利用した.
まず,データの非定常性を単位根検定で確認し,次に,共和分検定でコモントレンドを抽出した.全タームストラクチャーだけでなく,イールドカーブの長い方から1変量ずつデータを減らして分析し,コモントレンドが1つになる範囲を確認した.最後に,グレンジャ一因果性の検定で,無担保コール翌日物がイールドカーブ上の各金利に与える影響とその逆を検証した.
以上の分析から,日銀が政策変数である無担保コール翌日物の調節によりコントロール可能であるのは2年物までの金利であるとの結論を得た.