ジェンダー史学
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海外の新潮流
韓国における北朝鮮女性研究
――共生への道を模索するために――
山下 英愛
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2021 年 17 巻 p. 71-84

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抄録

韓国ドラマ「愛の不時着」1 には、北朝鮮2 の地方の村に暮らす女性たちの様子が生き生きと描かれている。それがどこまで「本当の姿」なのだろうかと思った人は多かったはずである。北朝鮮は日本と地理的に近く、植民地統治時代には日本人もたくさん住んでいた3 。ところが戦後は70 年以上もの間、諸々の理由があったにせよ無関心な態度をとり続けた。そのために、北朝鮮と言えば拉致問題や軍事パレードしか思い浮かべることができず、その地に暮らす一般の人々の姿を想像することすらできなくなってしまった。東アジアの平和やグローバル時代の共生を真剣に模索するためには、日本のジェンダー研究においても北朝鮮社会に対する研究は至急の課題と言えるだろう4

本稿では、そのための基礎的な作業として、まず韓国における北朝鮮女性研究5 から学ぼうと思う。韓国は分断当事国であり、北朝鮮とは長い間敵対関係にあった。現在も分断による緊張関係は解消されていない。そうした中で、北朝鮮女性に関する研究が、いつから、どのように行われるようになったのか、内容はいかなるものなのか、について整理するのが本稿の目的である。紙幅の制約もあり、単行本を中心に大きな流れを把握することにとどめたことをお断りしておきたい。

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© 2021 本論文著者
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