日本プライマリ・ケア連合学会誌
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ジェネラリストに学ぶ診断推論
診断推論における「時間の軸」 : 動的診療のススメ
福原 俊一
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2010 年 33 巻 4 号 p. 423-426

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抄録

 ジェネラリストの使命は, 診断をつけることよりも, むしろ将来の患者のアウトカムを可及的最善に維持・改善すること, 少なくとも悪化の速度を遅らせることにある. この使命の達成を最終的に左右するのはアクション (予防, 治療, 指導) であり, 診断推論も「アクションのための推論」でなければならない. 推論とアクションは, 相即不離なのである.
アクションは, 適切なだけでなく, 適時でなければならない. 同じアクションでも適時でなければ, 無意味, 時に有害でさえあり得る. この点で「時間の軸」は極めて重要である. 医療者がともすると過依存しがちな検査などの「情報」は, 得られた瞬間に固定され, 「過去」となる. 重要なのは, 患者の「未来」=アウトカムである.
医療を受けることは, それ自体が事故や死亡リスクの高い行為である. 患者の「現在」を, 鋭い観察と感性で捉え, 「未来」を見立て, 適切なアクションを適時にとることこそが, 医療に内在するリスクを少しでも低下させる手立てである.

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© 2010 一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
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