2011 年 34 巻 2 号 p. 108-114
【目的】高齢者の肺炎予防は重要課題で, 肺炎球菌ワクチンは注目されている. 離島在住で70歳以上の高齢者における肺炎球菌ワクチンの効果を明らかにする.
【方法】研究デザインは介入前後の比較研究とした. 山口県萩市の2離島在住の70歳以上の高齢者を対象に (男性123名, 女性229名), 平成20年12月から平成21年2月にワクチンを接種した. 平成20年1月1日からワクチン接種日までを接種前期, ワクチン接種4週間後から平成21年12月31日までを接種後期とした. 接種前期と接種後期の緊急搬送および上気道炎に関連した外来受診を率と人年法を用いて算出, 比較した.
【結果】緊急搬送率は, 接種前期0.023/年, 接種後期0.026/年で有意な差はなかった (p=0.80). 外来受診率は, 接種前期より接種後期で低かったが (0.49/年, 0.32/年), 統計的に有意ではなかった (p=0.059).
【結論】離島在住で70歳以上の高齢者において, 肺炎球菌ワクチン接種前後では, 緊急搬送と外来受診に変化はなかった. 本研究では様々な限界もあり, それを考慮して肺炎球菌ワクチンの効果について更なる検討が必要と考える.